拒絶査定不服審判(きょぜつさていふふくしんぱん)Appeal
”拒絶査定不服審判”とは、審査官の下した拒絶査定(出願された発明に対して特許付与を拒絶する査定)に対して不服を申し立てる審判をいう(特許法第121条)。3名または5名の審判官の合議によって、審査官の判断が正しいかどうかが審理される。
審理の結果、審査官の判断に誤りがあると考えられるときには、再度審査官に審査を命じるか、直ちに特許査定(登録査定)を行うかのいずれかが行われる。審査官の判断が正しいと思われるときは、拒絶査定が維持される。審判における最終的な決定を審決という。審決に不服がある場合には、訴訟を提起することができる(審決取消訴訟)。
拒絶査定不服審判請求の際に特許請求の範囲に補正があった場合、再度審査官に審査させる(前置審査)。元の審査官がみれば、補正された特許請求の範囲について、直ちに特許できる場合もあるからである。
(弁理士古谷栄男)
拒絶査定不服審判
拒絶査定不服審判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/03 13:55 UTC 版)
拒絶査定(特許出願についての拒絶査定又は延長登録についての拒絶査定)に不満がある場合には、その謄本の送達後3ヶ月以内に拒絶査定不服の審判を請求することができる(特許法121条1項)。審判の請求書には、請求の趣旨およびその理由等を記載する。請求の理由については、追って補充することができるが、審査官及び審判官が請求人の主張を迅速かつ的確に把握する上で重要であることから、審判請求時において審判請求の理由を実質的な内容をもって明確に記載することが望ましいとされる。 審判請求は、審決が確定するまでは取り下げることができる。 拒絶査定不服審判の請求と同時に、明細書、特許請求の範囲、又は図面の補正が可能(自発補正書提出)である(特許法17条の2第1項第4号)。また、拒絶査定の謄本の送達後3ヶ月以内は、その出願を分割することができる(特許法44条)。分割出願を行うことにより、拒絶理由のない請求項につき迅速な権利取得を図ることができる。 請求の理由を記載せず(若しくは上述の追って補充する旨を記載した)審判請求した場合は、特許庁長官又は審判長より補正命令がなされる。補正命令の指定期間内に審判請求書の補正を行わない場合は、審判請求は却下される。 拒絶査定不服審判請求における特許請求の範囲の補正は、特許請求の範囲の限定的減縮、請求項の削除、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明のみ認められる。 拒絶査定不服審判の請求と同時に明細書、特許請求の範囲、又は図面について補正があった場合は、特許庁長官は審判に先立ってその請求を審査官に再び審査させる(前置審査、特許法162条)。通常はもとの審査官が審査することになるが、別の審査官であってもかまわない。審理の結果、審査官は請求に理由があるとする場合は拒絶査定を取り消し、特許査定を行う。 拒絶査定不服審判の審理方式は書面審理による。ただし、審判長は、当事者の申立により又は職権で、口頭審理によるものとすることができる(特許法145条)。 審判に関する費用は請求人が負担する(特許法169条)。 審判の判断(審決という)に不満であれば、この謄本送達後30日以内に特許庁長官を被告として知財高裁に審決取消訴訟を起こすことができる(特許法178条第1項)。裁判所において審判の審理が不適法であったことが明らかになった場合には、特許庁の審決は取り消される。それでもだめなら最高裁へ上告できる(民訴311条第1項、312条、318条)。 拒絶査定不服審判を請求できるのは、拒絶査定を受けた者又はその承継人である。また、特許を受ける権利が共有の場合は、共有者の全員が共同して審判請求しなければならない(特許法132条第3項)。
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