打ち上げから火星周回軌道まで
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/26 09:01 UTC 版)
「マーズ・リコネッサンス・オービター」の記事における「打ち上げから火星周回軌道まで」の解説
2001年、NASAは探査機製造の主契約企業としてロッキード・マーティンを選定し、同年末までには計画のすべての搭載装置が選び出された。 MRO の製作には大きな後退もなく、2005年5月には打ち上げ準備のためケネディ宇宙センターへと運び込まれた。 2005年8月12日、MROはケープカナベラル空軍基地からアトラス Vによって打ち上げられた。火星到着までに惑星間軌道を7ヶ月半かけて飛行し、この間に多くの観測装置がテスト・調整された。2006年3月10日、火星に接近し南半球の高度370〜400 kmに到達したとき6つのメイン・エンジンが27分間噴射された。このときヘリウムの加圧タンクが予測よりも低温となり、燃料の圧力が減ったため、2 %の推力の減少が起こったが、自動的に噴射が33秒間延長されることで補われた。これにより探査機の速さは2.9 km/sから1.9 km/sへと減速し、近火点高度 426 km、遠火点高度44,500 km、軌道周期33.5時間の長い楕円形の極周回軌道に投入された。 2006年3月30日より、MROはエアロブレーキ (aerobreaking) による軌道変更を開始した。わずかな火星大気の抵抗で速度を落とすこのエアロブレーキにより、半分の燃料で軌道を円に近づけ周期の短いものとすることができる。 これは探査機が過度に加熱しないが探査機を減速させるに十分なだけわずかに大気の影響を受けるよう近火点を下げることで行われる。まず、近火点をこの高度まで下げるために、7日間かけて5度のスラスター噴射が行われた。火星の大気圧は季節により変動するため、この高度もこの変動に依存する。1997年に同様のエアロブレーキによる軌道変更を行ったマーズ・グローバル・サーベイヤーでは太陽電池板のひずみが生じ計画に大幅な遅延をもたらしたが、MROでは大きな問題もなく、微修正のためにスラスターを用いながら、445周火星を回る間 (およそ5ヶ月間) 近火点高度を維持し、遠火点高度を 450 km まで減少させた。これが完了すると最後に、大気の影響を受けないよう近火点を上げるスラスター噴射を8月30日に行った。 2006年9月、微調整のためにもう2回のスラスター噴射を行い、最終的におよそ火星表面から250〜316 km の高度をもつほぼ円形の軌道へと達した。 この後、地球からみて火星が太陽のすぐそばを通過する「合」 (solar conjunction) を迎えるため、観測装置が一旦停止された。10月7日から11月6日の通信不能の期間が終わったあとで「プライマリ・サイエンス・フェーズ」(primary science phase) が開始された。また11月17日には、MROがすでに火星上にいたローバー「スピリット」と地球との通信を行うテストに成功したと発表した。
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