微小管結合タンパク質と紡錘体のダイナミクス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/28 09:16 UTC 版)
「紡錘体」の記事における「微小管結合タンパク質と紡錘体のダイナミクス」の解説
紡錘体微小管が動的に伸長と短縮を行う過程は動的不安定性(dyanmic instability)として知られ、紡錘体の形状を決定に大きく寄与し、紡錘体のmidzoneへの染色体の適切な整列を促進する。微小管結合タンパク質(英語版)はmidzoneと紡錘体極で微小管に結合し、そのダイナミクスを調節する。γ-チューブリンは特殊なチューブリンで、γ-TuRC(γ-tubulin ring complex)と呼ばれるリング状の複合体へと組み立てられてα/βチューブリンヘテロ二量体の微小管へ重合する際の核形成(英語版)を行う。中心体近傍領域へのγ-TuRCのリクルートによって微小管の(−)端は安定化され、微小管形成中心(英語版)(MTOC)の近傍に固定される。微小管結合タンパク質Augminはγ-TuRCとともに機能し、既存の微小管から分枝する新たな微小管の核形成を行う。 微小管の(+)端は、+TIPs(plus-end microtubule tracking proteins)と呼ばれるタンパク質群がmidzoneのキネトコアとの結合を促進することで、崩壊(カタストロフ)から保護されている。+TIPsの1つ、CLIP170(英語版)はHeLa細胞で微小管の(+)端近傍に局在すること、そして前中期にキネトコアに蓄積することが示されている。CLIP170が(+)端をどのように認識しているかは解明されていないが、そのホモログは微小管をカタストロフから保護しレスキューを促進することが示されており、CLIP170がキネトコアとの直接的な接着を媒介することで(+)端を安定化していることが示唆されている。ヒトのCLASP1(英語版)などのCLIP結合タンパク質も(+)端とキネトコアの外側領域(outer kinetochore)に局在し、キネトコア微小管のダイナミクスを調節することが示されている。キイロショウジョウバエDrosophila melanogaster、アフリカツメガエルXenopus laevis、酵母のCLASPホモログは正しい紡錘体の組み立てに必要であり、哺乳類では、CLASP1とCLASP2(英語版)の双方が正しい紡錘体の組み立てと後期の微小管のダイナミクスに寄与している。(+)端の重合はEB1(英語版)タンパク質によってさらに調節される。EB1は微小管の(+)端に直接結合し、他の+TIPsの結合を調整する。 これらの微小管安定化タンパク質の作用には、多数の微小管脱重合因子が対抗する。これらの因子は染色体の集合を促進し、二極的な構造形成を促進するために紡錘体の動的なリモデリングを行う。キネシン13スーパーファミリーには結合した微小管の脱重合活性を持つ(+)端指向性モータータンパク質が含まれ、哺乳類のMCAK、ツメガエルのXKCM1がよく研究されている。MCAKはキネトコアで微小管の(+)端に局在し、そこでカタストロフを開始することで+TIPsの安定化作用と直接的に競合する。これらのタンパク質はATPの加水分解のエネルギーを利用し、プロトフィラメント構造を不安定化するコンフォメーション変化を誘導することで、キネシンの放出と微小管の脱重合を引き起こす。これらの活性が喪失すると、有糸分裂には多数の欠陥が生じる。他の微小管を不安定化するタンパク質にはOp18/スタスミン(英語版)やカタニン(英語版)があり、紡錘体のリモデリングに関与するとともに、後期の染色体分離を促進している。 紡錘体の組み立て時に適切な微小管のダイナミクスを維持するため、これらの微小管結合タンパク質の活性は綿密に調節されており、多くがオーロラキナーゼ(英語版)とPolo様キナーゼの基質となっている。
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