幹細胞とその自己組織化研究
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 18:11 UTC 版)
「笹井芳樹」の記事における「幹細胞とその自己組織化研究」の解説
1998年頃から、自己組織化研究を本格化させ、10年程かけて自己組織化の実験系の確立に取り組む。なお、この間、2000年理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター (CDB:Center for Developmental Biology) において、グループディレクターを兼任し、2003年には専任となった。この過程で、2005年には高橋政代とES細胞による網膜の分化誘導に成功し、2006年にはES細胞から視床下部前駆細胞を分化誘導させることに成功。マウスES細胞から外胚葉へ分化誘導する遺伝子XFDL156を発見し、2008年のセル誌に発表した。 また、2007年にはES細胞の大量培養法の開発や、神経系細胞の効率的な作成を発表。ES細胞の培養方法においてバラバラにしたヒトES細胞の死が問題になるが、笹井のチームはRhoキナーゼ (ROCK) というリン酸化酵素の活性化が原因であることを発見。Rhoキナーゼ阻害剤 (ROCK-Inhibitor) を培養液に添加することにより、ES細胞を大量培養することに成功している(従来1%の生存確率が27%に向上)。 さらに2011年4月7日付の英科学誌『ネイチャー』にマウスのES細胞から網膜全体を作ることに成功したことを発表。ES細胞から網膜を立体的に作ったのは世界初の試みであり、「この分野を一変させた」と高く評価されている。また、2012年には様々なホルモンを分泌する脳下垂体についても、立体的な形成に成功する。これら一連の研究により、2009年から2012年にかけて文部科学大臣表彰、大阪科学賞、井上学術賞、塚原仲晃記念賞、山崎貞一賞、武田医学賞などを立て続けに受賞した(節「受賞歴」も参照)。 2012年のインタビューでは、今後10年は生物の形や大きさを決める原理について研究していきたいと述べるとともに、再生医療や創薬への応用を目指す人達に対する技術移転やサポートについても抱負を語っていた。また、2013年のインタビューでは、ゲノム編集技術による将来展望や、細胞の分化誘導から組織を創り出すことを考える時代へ入っているとの認識を語っていた。
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