尻鞘(しりざや)
尻鞘
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/25 16:44 UTC 版)
「尻毛鞘(しりけさや)」、「箒鞘(ほうきさや)」とも呼ばれる。太刀を雨水や物損から守るための刀装具の一つで、騎乗した際に太刀の鞘尻が馬を不意に叩いてしまうことを防ぐためのものでもあり、装飾目的でも盛んに用いられた。 刀剣の鞘に覆いを掛けて雨水や傷から守ることは刀剣の登場当初から行われていたが、「尻鞘」と呼ばれる様式のものは平安時代後期に登場し、最も多く用いられたのは南北朝時代である。その後も太刀と併せて長らく用いられ、江戸時代に至っても「陣太刀」の付属刀装品として用いられている。 素材には様々な動物の毛皮が使われ、毛皮を袋筒状に縫い合わせたものを太刀の鞘に被せて革紐や組紐で結びつけて用いた。単純に袋状に作るのではなく、被せた際に鞘尻に向かって大きく広がるような形状に整えられ、佩用した太刀を大きく武張って見せるように作られている。江戸時代に作られたものは、鞘先を跳ね上げた形に整えられているのが特徴である。 当初は官位と役職により使用できる毛皮の種類が厳密に定められていたが、源平合戦を過ぎて鎌倉時代になると武士が世の主導権を握り出したこともあって身分による規定はほとんど守られておらず、個人の好みと財力によって各人が自由に選んだ材質を用いた。一般的には鹿毛皮と猪毛皮、および熊毛皮が用いられたが、特に日本国内では入手の難しい虎、豹、ヤクといった舶来の毛皮で作ったものが高級品とされ、これらを用いて作られたものは武士の憧れとされた。 毛皮以外の材質で作られたものは「鞘袋(さやぶくろ)」と呼ばれる。なお、太刀の鞘に毛皮で作られた袋を被せたものではなく、鞘そのものに毛皮を貼り付けて尻鞘のように象った様式の太刀拵も存在し、「尻鞘太刀拵(しりさやたちこしらえ)」と呼ばれる。
※この「尻鞘」の解説は、「太刀」の解説の一部です。
「尻鞘」を含む「太刀」の記事については、「太刀」の概要を参照ください。
「尻鞘」の例文・使い方・用例・文例
尻鞘と同じ種類の言葉
- >> 「尻鞘」を含む用語の索引
- 尻鞘のページへのリンク