少年の心理的特殊性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/22 07:03 UTC 版)
「少年保護事件の係属」の記事における「少年の心理的特殊性」の解説
こうした制度上の差異のほか、少年の被疑者については、易誘導性、易暗示性が指摘されている。これは、少年は、自己の言動が将来に及ぼす影響を洞察する能力に乏しいために、友人・知人である真犯人をかばいたい、取調べや裁判という面倒な事態から早期に解放されたい、あるいは、取調べ担当者や被害者といった年長者の言動から受ける恐怖感を免れたいといった動機から、自己の記憶を誠実に供述するのではなく、取調べ担当者の追及に安易に迎合したり、取調べ担当者が仮説として考えているにすぎない「事案の真相」を事実そのものと思い込んで、虚偽の自白をし易いということである。 よく知られた事例としては、いわゆる鹿児島ホステス殺し事件(最高裁昭和55年7月1日判決判例時報971号124頁、福岡高裁昭和57年6月29日判例タイムズ476号209頁)がある。これは、少年である2名の被告人らがホステスを強姦しようとしたものの抵抗されて未遂に終わり(有罪判決が確定)、強姦行為の発覚を防ぐため、同女の両脇・両足を持って山中の崖下に放り投げ、外傷性ショック等により死亡させたという公訴事実をもって起訴された事件である。しかし、裁判所は、被告人らが捜査段階で自白したような殺人行為を実行するのは困難であること、被害者の負傷状況は例えば下山しようとした際に誤って崖下に転落したと仮定しても矛盾がないこと、罪証隠滅工作とみられるような被告人らの言動は必ずしも殺人とは結び付かないことなどを指摘し、被告人らの捜査段階や公判での自白は信用できないと判断して、殺人については無罪の言渡しをした。
※この「少年の心理的特殊性」の解説は、「少年保護事件の係属」の解説の一部です。
「少年の心理的特殊性」を含む「少年保護事件の係属」の記事については、「少年保護事件の係属」の概要を参照ください。
- 少年の心理的特殊性のページへのリンク