小穂の型について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/20 15:36 UTC 版)
イネ科の小穂の変形の過程を考えて幾つかの型に分けることが行われる。 ウシノケグサ型 グラジオラスのような花序を小穂の原型と見れば、もっとも基本的な型として、一組の包穎があり、そこから上に護穎と内穎に包まれた小花が並ぶ形となる。小穂全体が左右から扁平で、それぞれの穎は左右から折りたたまれたようになるものが多い。小花の数は少ないものでは3個から、十数個に達する例もあるが、下のものが大きく、先端方向のものが小さく、時に先端から退化する。ウシノケグサ属やドクムギ属、カモジグサ属など多くのものがあり、ササ・タケ類もこれにあたる。なおこの型では栄養状態で小花の数が変わる例もある。 ヌカボ型 ウシノケグサ型から、最下の小花だけが残り、それより先端のものが全て退化したと考えられる型。上方からの退化傾向が最下の小花まで達した形。ヌカボ属の他、アワガエリ属、ネズミノオ属、ヒエガエリ属など。また、カラスムギ属やコメススキ属等は小花二つを包穎の中に含み、これらはウシノケグサ型からヌカボ型への移行型と見られる。ここまでのものでは、小花は先端側から退化傾向を示す。これに対して以降のものでは小花は基部のものから退化の傾向を見せる。 コウボウ型 小花は3個あり、先端の1小花が両性花で、下2花は雄性または無性花となったもの。ただしこれ全体が包穎に包まれ、細部の構造を見るのは難しい。コウボウ属の他、ハルガヤ属などがこれである。 トダシバ型 小花は二つで、先端側のもの(第二小花)が両性花、基部側(第一小花)が雄性。さらにトダシバでは第二小花にだけ束毛があるなど、形態的にも異なる。 エノコログサ型 小花は二個で、それらが一対の包穎に包まれる。ただし先端側の第二小花が完全なのに対して基部側の第一小花は大きく退化し、雄蘂や雌蘂はもちろん、内穎もほとんど消失し、護穎だけが残る。つまり小花は一つしかなく、二枚の包穎、二枚の護穎と一枚の包穎にそれが包まれる、という構造となって、単一の花だけを含むように見える。包穎は小さめ、護穎や第二小花の内穎は革質でよく発達し、第一小花の内穎は完全に消失する例も膜質の状態で残る例もある。この型の小花では穎の呼称を以下のように使うことも多い。 一般の呼称:第一包穎・第二包穎・第一小花の護穎・第二小花の護穎・第二小花の内穎この類の場合:第1穎・第2穎・第3穎・第4穎・内穎 エノコログサ属の他にチカラシバ属、ヌメリグサ属、チジミザサ属、スズメノヒエ属、メヒシバ属などキビ連の多くの属がこれである。 モロコシ型 エノコログサ型に近くて、第一小花の退化がさらに進んだもの。第一小花は膜質の護穎のみが残る。また第二小花の護穎と内穎も膜質となり、逆に包穎が質が厚く発達する傾向がある。ススキ属、カリマタガヤ属、モロコシ属、アシボソ属などがこれである。なお、この型の場合もエノコログサ型と同じ穎の呼称を使うことがある。 サヤヌカグサ型 やはり単一の小花のみを持つ。だがこれは元々は三小花からなる構造であり、たとえばイネでは両性花は第三小花に当たり、いわゆる籾はこの小花の護穎と内穎である。そしてその基部に一対の鱗片があるのは、包穎に見えるがそうではなく、きわめて退化した第一、第二小花である。真の包穎は肉眼で見えない大きさで存在する。ただしサヤヌカグサでは包穎、第一,第二小花全て完全に退化する。サヤヌカグサ属の他に、ツクシガヤ属などもこのような小穂をつける。 クサヨシ型 同じく単一の小花を含むもので、両性花は第二小花である点もサヤヌカグサ型と同じである。ただし第一、第二小花は小さな鱗片状の護穎のみとなり、それがよく発達した包穎の中に隠れる。種によっては退化した護穎が消失する例もある。クサヨシ属。 ウシノケグサ型の例:コバンソウ(コバンソウ属)赤く色づいているのが包穎それ以下の鱗片は護穎 同じくカラスムギ薄膜状のが包穎国色づいているのが護穎で芒がある先端のものほど小さいのがわかる。 ヌカボ型:ミヤマアワガエリ(アワガエリ属) モロコシ型:モロコシ(モロコシ属) サヤヌカグサ型:Oryza glaberrima(アフリカ産イネの1種):基部の第一、第二小花の痕跡がはっきり見える。 実際にはこれらからさらに変形した型が多くある。たとえばササクサは数個の小花を含む構造だが、最下の一つだけが完全であり、それより上の小花は護穎だけを残した形に退化している。これはウシノケグサ型からの変形と考えられる。
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