密室殺人の様式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/18 10:09 UTC 版)
ここでは状況の各パターンについて解説する。生成方法のパターンについては密室の分類と密室講義を参照されたい。 密室殺人という言葉はしばしば不可能犯罪と同義に使われる。狭義の密室殺人は施錠によって内側から密閉された部屋で、閉鎖解除と同時に他殺死体が発見される、という設定である。 外側からの閉鎖の例も多い。監視下にあって事件に関連しうる時間内には出入りがないと確認された部屋での殺人である。この場合監視の中断の有無が問題となる。外側からの施錠を密室に仕上げるには、封蝋や、合鍵の存在を否定しておくなどして、途中の閉鎖解除がない、あるいはないと思わせる必要がある。 砂やぬかるみ、雪などがあり、人が通れば必ず足跡を残すはずなのにないという設定もある。「二次元の密室」「雪の密室」「足跡のない殺人」などと呼ばれる。これには二つのパターンがある。砂ほかに回りを取り囲まれた建造物の中で死体が見つかる場合と、屋外で死体が見つかるが被害者以外の足跡がない場合である。足跡が付く間は密閉が続いていると考えられる。 以上の設定に人間の消失を加えた例もある。施錠中にたとえば窓から被害者以外の人物が確認されるが入ってみるといない、監視中に入って行く人物が観察されるが出て来るところは見られていない、被害者以外の足跡もあるがその主は建造物の中あるいは被害者の脇にいない、などである。 他にもたとえば、床がきしみやすく足音をたてずにはいられない、窓と扉の隙間にはすべて接着剤を塗った紙を内側から貼ってある、池の中の小島が現場だがボートや潜水服はなく水中は蛭が大発生しており泳いで渡ることはできないなどの設定がある。 密室殺人とは言い難い不可能犯罪としては「衆人環視の殺人」がある。目前の人間が倒れたので近寄ってみると殺されているが、周辺には誰もいなかったという設定である。 多くの人間を擁した島嶼、船舶、列車、建造物などが、人為や自然現象で密閉されている中、殺人が起るという設定の小説があり、「孤島もの」「雪の山荘」「クローズド・サークル」などと呼ばれるが、密室の一種と見なす向きもある。アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』(1939)は、孤島の連続殺人で生き残りの中に犯人がいるはずが、最後の一人が吊り下げられた輪なわを発見した時点で、本来の密室殺人へと様相を一変する。同様に作者がやはり最後まで隠したところ、設定を忘れてもトリックは記憶に残った読者が、密室物として喧伝するという不幸のもとにある小説も存在する。
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