家庭用ミシン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 22:49 UTC 版)
家庭の部屋に置け、現代のものは通常、電気を動力源としている。古くは足踏み式や手回し式のものが多く使われ、直線縫いしか出来なかった。電気式のものは足元のフットコントローラーあるいは手元のパネルを用いて調節しながら駆動する。 家庭用ミシンは直線縫いの他に、多種類の模様縫いやボタン穴かがり、刺繍などのできる機能もある。模様縫いは、かつては「カム交換式」であったが、現在は「カム内蔵式(ダイヤルで切り換え)」か「コンピューター式(ボタンで選択)」となっている。最近のものは、一般に持ち運びでき、水平釜で自動糸調子や自動糸切り機能を搭載しているものも多く、使い勝手を中心に改良されている。ミシンを使うハードルが下がってきて、誰でも簡単に使えるようになってきた。 縫い速度はそれほど速くない(最高約700〜1000針/分)。 しかし家庭用であるがゆえに「低価格・高機能(縫い模様の多種類化、オールマイティ性)・操作の簡易化・軽量化」などといった相反する要素が求められ、その進化の過程でいささか無理が出てくるようになってきた。その一例が、プラスチックの多用・電子回路の採用・機構の複雑化である。戦後にごく一般的に使われていた黒い家庭用ミシンは、JIS規格によって寸法や材質などが定められており、使われている部品にはある程度の汎用性があった。しかし現在のミシンは電子化・複雑化(→ブラックボックス)している上、パーツについてもミシンの多様化に伴ってメーカーが各機種ごとにパーツを独自製造する一方で旧製品のものは在庫枯渇・絶版になりがちである。つまり「壊れても技術的にユーザー自身や町の販売店レベルでは手に負えず、高額なメーカー修理となってしまう。最悪の場合、パーツが手に入らないためメーカーですら直せない。」という状況であり、1台のミシンの使用年数低下に拍車をかけている面がある。もっとも、このような「多様化やブラックボックス化に起因する整備性の悪化、低寿命化」という問題は乗用車や家電、パソコンなどといった家庭用機械類においては半ば当然のように発生している状況であり、ミシンに限った話ではない。 また、近年は既製服の値段も非常に廉価になり、ミシンそのものの需要が減少してきている。この為(単機能での性能を追求すればいいことの多い職業用や工業用のミシンに比べ)「開発が難しい上に売れない」、経営を成り立たせるのが非常に難しい商品であると言われている。大手メーカーでも家庭用ミシン関連部門は非常に厳しい経営状況であり存続が常に問題視されている。 家庭用ミシンのテーブル側(下側)の機構 店舗に並ぶ家庭用ミシンの例。 家庭用ミシンの例。液晶画面を備えた多機能のものの例。
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