実際のユダヤ人文化・歴史との差異
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 17:00 UTC 版)
「アドルフに告ぐ」の記事における「実際のユダヤ人文化・歴史との差異」の解説
作中でカミルは「エホバ」を連呼するが、神の名יהוה(ラテン文字形表記:YHWH、あるいはJHVH、IHVH他)を「エホバ(Yehowah、Jehovah、Iehovahなど)」と発音したのは歴史的にはユダヤ人ではなく中世以降のキリスト教である。ユダヤ教ではバビロン捕囚以降、神の名前を直接口にすることは畏れ多いと憚られた結果、子音表記のみの神の名יהוהの正しい発音が忘れ去られたことにより歴史的に古代のユダヤ人がどのように発音していたかは現代において不明である。即ち近現代のユダヤ教徒がカミルのように神の名を直接唱えることも、エホバと発音することもない。また、カミルはユダヤ人になる方法として「エホバの神を信仰すること」とカウフマンに教えているが、カウフマンがキリスト教徒であると仮定するならば、ユダヤ教と同じ(旧約)聖書の神を信仰している以上、この説明だけではユダヤ教改宗としては足りない(詳細はヤハウェを参照)。 カウフマンはカミルに対して安息日である土曜日の正午に決闘に来るようにビラを貼り、カミルも応じるが、ユダヤ教徒が安息日に労働を行うことは原則禁じられている(ただし、決闘を労働と見なさなければその限りではない)。 パレスチナ問題が戦後になってユダヤ人が移住してから始まったとしているが、実際にはパレスチナへのユダヤ人の入植(シオニズム)はそれ以前の19世紀末から開始されている。またパレスチナでは1929年の嘆きの壁事件を始め、戦前の1930年代後半の段階ですでに入植したユダヤ人・パレスチナ人・駐留イギリス軍の間で三つ巴の内戦が展開されていた。さらに大戦中からイスラエル独立までイギリスは白書政策に基づきパレスチナへのユダヤ人の移住を厳しく制限していた(一応、登場人物らが移住したのは1948年のイスラエル建国後とただし書きがある)。 カウフマンはパレスチナ人女性と結婚しているが、非ムスリムの男性がムスリムの女性と結婚する場合は必ずイスラム教に改宗しなければならない。しかし、カウフマンが改宗していることを窺わせるような描写は無い。 カミルがイスラエルでシーア派のテロによって殺されたと述べられているが、同国内にシーア派はいない(隣国レバノンにはシーア派の武装集団ヒズボラの本拠地があるが、イスラエル国内でのテロ活動は少ない)。 カミルがカウフマンの遺体に向かって「来世でまた会おう」と言う場面があるが、ユダヤ教には来世や転生の考えは無い。ただし、作中でもカミル自身が仏教と比較してそれらについて言及している描写がある。
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