始動する/地球 磁気のように/木の葉あつめ
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評 言 |
〈昏い銀河/螺旋階段を/つるつるのぼる〉とともに、俳誌「形象」復刊第1号(1966年1月)に掲載されている。その形式は三行の分かち書きで、末尾に「形象復刊の日の作」の添え書きもある。 〈始動する地球〉は再始動する句誌を暗示する。そしてさらには一句の創成をも象徴している。〈磁気〉とは磁場もしくは磁界に反応する磁性のことである。地軸にも北極点と南極点がある。ゆえに磁界を言語界と解釈すると〈木の葉〉は自ずと言の葉すなわち〈ことば〉と認識される。このとき地軸はいわば句の根幹として磁気を帯び、その磁力により言葉を引き寄せる。こうして言語界において清新な一句が樹立する。 また、句の生成という観点から考えると別の解釈も可能だろう。まるで植物が光や水を得て成長するようにひとつぶの種子としての〈地球〉が〈ことば〉の力を以て発芽しようとする。それが〈始動する〉である。そうして真新しい地球が宇宙空間という言語界に唯一無二の一句として誕生する。 〈地球 磁気のように〉の一字空けにも意味がある。その空間に引力が生まれるからだ。磁気を帯びるとは磁力すなわち引力が備わっているということになる。言葉の磁力とはたとえば磁石のN極とS極が互いに引き合うように、対極に位置する言葉にも引力が作用する。逆に同極同士では反発しあうように、言葉においても同属は反発することが予知される。これは句作の際の配合や二物衝撃などを思索するときの基準とも成り得る。季語の作用について、殊に季重ね等を配意するうえでもひとつの指針となるように思う。 「形象」は前原東作・誠兄弟により1955年に創刊された。その後二度の休刊を経て、1991年に第三次「形象」が始動する。命名者の吉岡禅寺洞の主宰誌は「天の川」であり、その発行所は銀漢亭であったことを思えば、当初から宇宙空間にも等しい壮大な言語界が意企されていたのだろう。言葉の磁力という着想を日本語の最短詩型において体現することが形象俳句の責務と考える所以である。 |
評 者 |
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備 考 |
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