奈良県の周産期医療システム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/13 14:09 UTC 版)
「大淀町立大淀病院事件」の記事における「奈良県の周産期医療システム」の解説
この事件の背景には、奈良県の救急搬送体制の整備の遅れ と高次医療機関におけるハイリスク患者受け入れ能力の逼迫 が指摘されている。 2006年の時点で奈良県には新生児のための集中治療部門(周産期医療センター)はあっても母体にも対応できる「総合周産期母子医療センター」が近畿・西日本で唯一設置されておらず、緊急搬送の受け入れ先が県内で見つからずに大阪府の施設に頼る例も少なくなかった。奈良県で「総合周産期母子医療センター」がようやく稼働をはじめたのは2008年になってからである。 奈良県では1996年から「奈良県周産期医療情報システム」の運用が開始されている。24時間体制で、協力病院の空きベッド等をネットワーク上で把握し、妊婦や新生児の転院搬送をするものである。 奈良県では、ハイリスク妊婦の県外搬送率は、22.9~37.2%と他県に比べ高くなっている(2002~2006年調べ)。妊婦を含む全体での救急搬送時間に関しては西日本で最も悪く、患者収容から病院搬送までの時間も過去数年で大幅に長くなってきている。近畿2府4県では唯一30分を超え、2時間を越えたケースも一番多く、全国平均を上回る。 県医務課では「受け入れ先がなかなか見つからないケースが増えていることが原因」と話す。周産期医療ネットワークは構築されているものの、不備も表面化している。奈良県の救急搬送システム「救急医療情報システム」は最低1日2回しか更新されておらず、奈良県で妊婦の県外搬送が常態化している一因とみられ、医療関係者は早期の改善を求めている。 「県救急医療情報システム」は、消防が患者の搬送先を探すため、登録された医療機関が患者を受け入れ可能かどうか、診療科目ごとにインターネット上で確認できるシステムである。各医療機関は、午前8時と午後5時に必ず更新することになっており、状況が変われば随時更新するよう県から求められているのだが、リアルタイムに情報更新されず、実態が反映されていないという。 2007年の奈良県橿原市の女性のケースでも、その1年前に大淀病院事件があったにも関わらず、全県的な搬送システムが未整備の状態が続いたことも一因となったとみられている。搬送受け入れを断った奈良県立医大の場合、29日は午前2時の段階で2床空いていたが、午前5時半には1人定員オーバーだった。ただしシステムはこの間ずっと「受け入れ可能」の表示だったという。 一方ある県立病院では、宿直の間はシステムを「不可能」表示にしている。病院側は「仮に空きベッドがあっても通院患者以外の急患に対応できないから」と説明しており、病院によって判断に差がある実態も浮かんでいる。
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