外骨格の強度と生息環境
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 07:44 UTC 版)
「アースロプレウラ」の記事における「外骨格の強度と生息環境」の解説
アースロプレウラの知られる外骨格の化石標本はその巨大さに反して異様に薄いことにより、イモムシのように外骨格は柔らかく、体内の筋肉と血リンパの水圧でその安定性を維持するという考えが一時的にあった。これを踏まえて、アースロプレウラの柔らかい巨体は陸上では維持しにくく、陸棲ではなく、むしろ半水棲ではないかという説まで提唱された。しかし、アースロプレウラの外骨格化石は後に全てが(元の外骨格より薄い)脱皮殻と見直されるに連れて、前述の一連の見解が疑わしく見受けられる。加えて、外骨格化石の保存状態(亀裂・曲面・裏面の砂の埋め入れ・薄い脱皮殻自体が保存されること・他の節足動物の断片より運搬作用に耐えること)、脚の付け根を強化した腹面構造、および足跡化石(地上由来・液圧のみに支えられる外骨格では生み出せない3cmほどの深さ)も、アースロプレウラはむしろ硬化が進んだ外骨格をもって、陸上を徘徊したことを示唆する。また、足跡化石の形態と現生多足類の比較により、アースロプレウラの胴部は左右に能動的で歩きも早く、機動性は高かったと考えられる。 アースロプレウラの生息環境について、古典的には石炭森林(coal swamps, coal forest、石炭紀の森林)という、植物の密度が高い熱帯雨林だと考えられた。これは早期の研究において、知られる体の化石は多くが石炭森林の植物化石と共に保存されたからである。しかし、これは単に早期の発掘が石炭森林由来の堆積累層を中心にして行われたからであり、運搬作用(地質作用により別の場所から運搬されて混入した)の結果であるはずのない足跡化石も、ほとんどが干潟や海岸など植物の密度が低い地形由来である。前述のような開いた環境由来の堆積累層からも後に(運搬作用の影響をほぼ受けていないことを示唆する)整った化石が発見され、化石記録も石炭紀熱帯雨林の崩壊事変(Carboniferous rainforest collapse)と共に激減することはなく、その生態は石炭森林に依存しないことが示される。これらの一連の再検討により、アースロプレウラは植物が密生した森林ではなく、主に平坦で植物の密度が低い環境に生息したと見直されるようになった。 また、足跡化石が見つかる堆積累層にはエリオプスなどの両生類の骨化石も産出することにより、アースロプレウラは石炭紀後期からペルム紀前期にかけて、一部の早期の四肢動物と同じ生息環境にあったと考えられる。
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