均等の要件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2014/04/10 20:26 UTC 版)
均等論はボールスプライン事件の最高裁判決(最高裁平成10年2月24日第三小法廷判決)において初めて認められた。以後、これを踏襲した判決が多数繰り返されており、解釈として確立した。この判決において最高裁は、「特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等(引用者注:特許侵害を疑われている製品等)と異なる部分が存する場合であっても」以下の5つの要件を満たす場合には「右対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である。」と判示した。 対象製品等との相違部分が特許発明の本質的部分ではないこと。相違部分が特許発明の本質的部分であるときには、特許発明の実質的価値が対象製品等に及ぶとはいえないからである。何が特許発明の本質的部分であるかは、「特許発明を先行技術と対比して課題の解決手段における特徴的原理を確定した上で、対象製品の備える解決手段が特許発明における解決手段の原理と実質的に同一の原理に属するものか」を基準として判断する。(東京高裁平成12年10月26日判決「生海苔の異物分離除去装置事件」) 相違部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達成することができ、同一の作用効果を奏すること。第1要件が満たされる場合にはこの要件(第2要件)も満たされる場合が多い。学説上第2要件を「置換可能性」ということがある。 相違部分を対象製品等におけるものと置き換えることが、対象製品等の製造等の時点において容易に想到できたこと。容易であったかどうかは、「当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者」にとって容易であったかどうかを基準にする。「容易想到性」とも。 対象製品等が、特許発明の出願時における公知技術と同一、または公知技術から容易に推考できたものではないこと。特許発明の出願時における公知技術と同一、または公知技術から容易に推考できたものは、新規性または進歩性がないものとして、何人も特許権を取得できなかったはずのものであるので(特許法29条1項、同条2項)、そのような技術に特許権の効力を及ぼすことはできないからである。 対象製品等が特許発明の出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情がないこと。「意識的に除外する」とは、対象製品等を除外するように「特許請求の範囲」を補正あるいは訂正したり、出願手続において意見書等で対象製品等が「特許請求の範囲」に含まれないことを主張して特許査定を受けた場合などをいう。これを「包袋禁反言の法理」(ファイルラッパー・エストッペル)という。判決の文言上、「特段の事情」は包袋禁反言の場合に限定されないものと解されるが、包袋禁反言以外の「特段の事情」が認められた判決はない。 上記の5つの要件のうち、一つでも満たさない場合には均等は成立しない。
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