地域の安定化と紛争解決の手法として
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/08 13:45 UTC 版)
「コソボ地位問題」の記事における「地域の安定化と紛争解決の手法として」の解説
ヴェストファーレン条約以来の国際法の基盤となる国境線不変更の原則を無視し、主権国家であるセルビアの同意なくその領土の分離を認めることは、今後の国際紛争の大きな火種にあるとの主張が存在する。 コソボ独立を支持する立場からは、コソボで多数派を占めるアルバニア人はコソボの独立を希求しているのに反して、コソボが紛争以降8年にもわたって不安定な立場におかれていたことを重視し、これ以上この状態が長引けば大規模な反乱も予想されるため、コソボの独立を是認せざるを得ないと考えられている。また、コソボにおいては、セルビアの統治は8年間にもわたって停止されており、再びコソボをセルビアの統治下におくことはもはや不可能であるとも考えられている。コソボの独立はコソボ紛争を背景とする特異な(sui generis)ケースであり、他地域における独立問題の前例とはならないと説明されている。 一方の反対派からは、セルビアがコソボを統治できるかどうかはあくまでも内政上の問題であって、国際法上の問題ではない。統治状態に関わらず他国がセルビアの主権を無視して一部領土の分離独立を認めることにより、他地域での独立運動の先鋭化だけでなく、近隣諸国の政治的な思惑による他国に対する主権侵害を今後触発するとの警鐘がコソボの独立宣言当時から出されていた。スペインやグルジアなど、国内に少数民族問題を抱える国々の多くが、同様の立場からコソボの独立に反対している。 コソボが独立を宣言した2008年、南オセチアやアブハジアはコソボ独立を前例に、自らの独立を各国に求めるとした。同年8月にグルジアの南オセチア進攻で発生した南オセチア紛争では、ロシアはグルジアに直接軍事介入して南オセチアの独立を軍事的に保障した上で、国家承認を求めていた南オセチアとアブハジアの独立をロシアなど数箇国が支持した。さらに、クリミアのウクライナからの独立及びロシア併合においてもロシアのプーチン大統領はコソボ独立を前例としてその手続を正当化している。この場合、ロシアは友好国であるセルビア側の立場を取りコソボの独立に反対していたが、欧米の同盟国がこぞってコソボ独立を「特例」として承認したことに対する報復的な法解釈として、今後ロシア人を少数民族として有する東欧諸国を脅かしている。
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