国ごとの違い
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/01 06:14 UTC 版)
アンシャル体はきわめて広い地域で使われたため、ビザンチン、アフリカ、イタリア、フランス、スペインおよびインシュラー(「島」、すなわちアイルランドおよびイングランド)のアンシャルは少しずつ異なる書体が使われた。 ローマ時代のアフリカのものは、他の地域のアンシャルよりも角ばっている。とくに a の湾曲部が鋭く尖っている。 ビザンチンのアンシャルは特徴的な2種類のものがある。「b-d アンシャル」は b と d の形が半アンシャル(下記)に似ており、4世紀から5世紀にかけて用いられた。「b-r アンシャル」は5世紀から6世紀にかけて用いられ、b は他の字の倍の大きさがあり、r の湾曲部はベースラインの上に載っていて、そこから縦棒がベースラインの下に伸びている。 イタリアのアンシャルは丸い字(c、e、o など)の上部が平たくなっており、a の湾曲部は(アフリカと同様)尖っており、d の縦棒はほとんど横棒といっていいくらい寝ており、フィニアル (f、l、t、s など一部の文字につくセリフのこと) は枝分れしていた。 インシュラー・アンシャル (インシュラー体とは別。混同しないこと) は、一般に単語がはっきりと区切られ、強勢のある音節にはアクセント記号が加えられている。おそらくこれはアイルランドの写本作者がラテン語に由来する言語を話さなかったためであろう。また、他の地域のアンシャル字体には見えないインシュラー独特の略字を使っている。くさび型のフィニアルを使い、すこし下に下った「懸垂 i」を(語末で) m や h とつなげて書いている。動物や点(「Insular dotting」と呼ばれ、しばしば3つまとめてつけられる)で装飾を加えている。 フランス(すなわちメロヴィング朝)のアンシャルは、(g、p などに)細いディセンダを使い、x の直線の交点がまん中よりも上になっており、d の縦棒が巻いており(リンゴに少し似ている)、魚・木・鳥などのさまざまな装飾が加えられている。 キリル文字写本は、9世紀末にギリシャ語のアンシャル体から発達したもので(グラゴール文字をほぼ淘汰した)、本来は古代教会スラブ語の典礼の言葉を記すために使われた。初期の字体はウスタフ体(устав、11世紀から14世紀に主流)、後の字体は半ウスタフ体またはポルウスタフ体(полуустав、15世紀から16世紀)と呼ばれる。
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