固有の振動数
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 21:16 UTC 版)
先端に重りを付けたばねを天井に吊るし、重りを下に引っ張り、力を放す。すると重りは一定の振動数で上下に振動する。この一定の振動数は「固有振動数」と呼ばれる。この例のような、線形特性のばねと質点(重り)と基礎(天井)から成る1自由度の系では、固有振動数は f n = 1 2 π k m {\displaystyle f_{n}={\frac {1}{2\pi }}{\sqrt {\frac {k}{m}}}} となる。m は重りの質量、k はばね定数、π は円周率、fn が固有振動数である。このような固有振動数を持つことが、ばねの主要な特性の3つ目である。上の式では、k が大きくなるほど fn が大きくなり、k が小さくなるほど fn が小さくなる。一般的にも、ばねが硬いほど固有振動数が大きくなり、ばねが柔らかいほど固有振動数が小さくなる。 固有振動数は実際上のあらゆる振動の問題に関係し、固有振動数は振動の問題を考えるときの最重要の物理量ともいわれる。特に、大きさや向きが周期的に変動するような力が質点に加わったり、ばねを支える基礎自体が周期的に揺れ動くとき、このような外からの振動数が固有振動数に一致すると「共振」と呼ばれる質点が激しく振動する現象が発生する。共振を積極的に利用する機械・道具もあるが、通常は共振を避ける必要がある。共振が起こると、機械の動作が不安定になったり、故障の原因となったり、最悪は破壊事故を引き起こすこともある。このため、固有振動数と外からの振動数をずらすように機械や構造物を設計することが求められる。 一方で、ばねの固有振動を持つ性質を利用することで、振動の伝達を緩和することもできる。固有振動数が外からの振動数よりも十分小さいとき、振動がばねが支える質点に伝わりにくくなる。これを利用することによって、ばねが支える物体の振動を和らげることができる。振動を伝わりにくくする一般的な目安としては、固有振動数が外からの振動数の1/3以下となるようにするのが望ましいとされる。例えば鉄道車両では、金属ばねに比べてばね定数を小さくすることができる空気ばねを採用し、乗り心地を良くしている。
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