各種報告書
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 17:43 UTC 版)
死の灰による電離放射線への曝露による主要な長期的健康被害は甲状腺癌、他の癌腫瘍、および白血病のリスク増大である。放射線被曝とその後の癌リスクとの関係は"よく理解され、最も定量化された、あらゆる一般的な環境における人間に対する発癌性との関係を示している"とアメリカ国立癌研究所の報告書は記している。米国では男性は女性よりも22%も癌の件数が多いが、放射線による発がんの影響については男性よりも女性の方がずっと高い。近年の全米研究評議会とアメリカ合衆国環境保護庁の両方で実施された研究によれば、女性は男性に比べ放射線誘発癌への感受性が以前に考えられていたよりもはるかに高いことが確認された。放射線感受性の高い乳房、卵巣、甲状腺などの女性に特定の器官がこの違いをもたらすと推定されている。 アメリカ合衆国環境保護庁の1999年の連邦指針報告書 No. 13 (FGR-13) 「放射性核種への環境曝露のための癌のリスク係数」 (英: Cancer Risk Coefficients for Environmental Exposure to Radionuclides PDF) では、女性は男性より48%も高い放射性核種に関連した癌の死亡リスクを有すると著者達は結論付けている。放射線誘発癌の性別に基づく差のさらなる証拠は、2006年の全米研究評議会によるBEIR VII報告書として知られている「低線量電離放射線被曝による健康リスク」 (英: Biological Effects of Ionizing Radiation-VII Health Risks from Exposure to Low Levels of Ionizing Radiation PDF)(概要の和訳) に掲載され、放射線被ばくに起因するリスクは女性が男性を37.5%上回っていることが発見された。癌の死亡率とは別に癌の発症率を考えると男女による差はさらに大きくなる。同じレベルの放射線被ばくを受けた場合に女性が癌を発症する可能性は、アメリカ合衆国環境保護庁の報告書は男性よりも58%多いと推定する一方で、BEIR VII委員会は52%高くなると結論づけた。 男女のリスクの差は特定の臓器について比較するとさらに大きくなる。両方の報告書は共に乳癌、卵巣、肺、大腸、および甲状腺の組織が女性において放射線の影響を受けやすいことを示している。例えばFGR 13は女性の甲状腺癌の発生率の比は男性に対し2.14倍であると推定しているのに対し、BEIR VIIの調査結果は女性は放射線により誘発される甲状腺癌は4.76倍とさらに脆弱であることを示唆している。 乳房に対する環境によるリスクへの懸念が高まる中で、BEIR VII報告書が「放射線は乳癌に対し他のリスク因子と相乗的に作用する可能性がある」および「 PCBやダイオキシン類のような内分泌を乱す化学物質が放射線と組み合わされると、単独で作用する場合よりもリスクを増加させる可能性を高める」ことを示唆する調査報告から引用したことは興味深い。それに関連する懸念は、放射性物質は母乳を通過する可能性があることで、風下住民の女性達の中には自分の子供に母乳を与えることに消極的になってしまうのも無理はない。乳児が摂取する放射性物質の量を減らすことは重要な予防策であるが、それにより女性達は自分の健康のための予防措置を取ることを不可能にしてしまう。たとえば母乳を与えることは乳癌発症のリスクを減らすことができるという報告が幾つか知られている。授乳を控えることによって風下住民の女性の乳癌発生リスクはさらに上昇する。
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