古典日本語の形容詞の活用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/08 07:10 UTC 版)
形容詞には、「新しい」「美しい」「凄まじい」のように連用形の語尾が「しい」又は「じい」で終わる語群と、「大きい」「高い」「広い」のように「い」で終わる語群がある。現代日本語では両者に文法上の違いは無いが、古典日本語では終止形以外の活用形に違いがあった。連用形の形から、それぞれ「シク活用」「ク活用」と呼ぶ。「しい」の部分は伝統的に活用語尾と見なされることから、現代日本語の表記法でも語幹に含めず、送り仮名を送ることになっている。シク活用の語は「楽し」「悲し」「恋し」「恐ろし」など心の動きを表す語が多く、ク活用の語は「赤し」「高し」「暗し」「長し」など事物の性質や状態を表す語が多い。 カリ活用と呼ばれる補助的な活用の系列があり、「〜くあり」が転じたものである。「高からず」「高かりき」「高かるべし」のように、一部の語尾に接続する際に用いる。現代九州方言の終止形・連体形「高か」は「高かる」に由来する。 連用形は「く」の形で現代口語でも変わっていないが、平安時代に「高う」「うれしう」のようなウ音便形が現れ、現在も西日本の方言で使用されている(東日本方言では音便にならない形が存続した)。 連体形は、「高い」「うれしい」のような「き」が「い」となるイ音便形が現れ、鎌倉時代以降の口語において動詞と同様、終止形が連体形に統合されるようになって終止形も「高い」「うれしい」のような語形をとるようになった。なおカリ活用の変化は「あり」の変化に従っている。 已然形の「けれ」は通常、本活用に入れられているが、意味上・形態上から見てカリ活用の方に属し、「くあれ」が「けれ」に変化したものである。「かれ」という語形も江戸時代以前まで併存していた。また奈良時代には本活用に「あり」を介さない「け」の語形が存在し、「けれ」と併存していた。これに由来する「けれど(も)」は独立して現代口語の接続助詞・接続詞となっている。
※この「古典日本語の形容詞の活用」の解説は、「形容詞」の解説の一部です。
「古典日本語の形容詞の活用」を含む「形容詞」の記事については、「形容詞」の概要を参照ください。
- 古典日本語の形容詞の活用のページへのリンク