原子による輻射場の吸収・放出
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/08 04:20 UTC 版)
「プランクの法則」の記事における「原子による輻射場の吸収・放出」の解説
詳細は「アインシュタイン係数」を参照 空洞炉中の輻射場(電磁場の熱放射)は空洞炉の壁の物質での吸収、放出を介して、熱平衡状態にある。1916年と1917年の論文において、アルベルト・アインシュタインは輻射場が気体分子によって吸収、放出されるとし、その過程の議論からプランクの公式が導かれることを示した。アインシュタインはボーアの原子模型で記述されるように、分子は特定の離散的なエネルギー準位をとる定常状態にあり、輻射場の放出と吸収により、異なるエネルギー準位に遷移するものとした。そして、放出と吸収の遷移確率を導入し、その詳細釣り合いの条件とウィーンの変位則からプランクの公式とボーアの振動数条件が導かれることを示した。なお、この論文の中で、自然放出、誘導放出の概念とそれらを記述するアインシュタインのA係数、B係数が初めて導入された。 原子のエネルギー準位が Ei (i =1,2,…) と離散的な値をとるとすると、温度 T にある N 個の原子の集団において、原子がエネルギー Ei の状態にある確率はボルツマン統計によって、 P i = g i e − E i / k T Z {\displaystyle P_{i}={\frac {g_{i}e^{-E_{i}/kT}}{Z}}} で与えられる。但し、gi は準位の縮退度、Z は分配関数である。よって、 エネルギー準位 Ei にある原子数 Ni とエネルギー準位 Ej にある原子数 Nj の比は N i N j = N i / N N j / N = P i P j = g i g j exp ( − E i − E j k T ) {\displaystyle {\frac {N_{i}}{N_{j}}}={\frac {N_{i}/N}{N_{j}/N}}={\frac {P_{i}}{P_{j}}}={\frac {g_{i}}{g_{j}}}\exp \left(-{\frac {E_{i}-E_{j}}{kT}}\right)} となる。ここで特定の2準位 Em、En (Em > En)での輻射場の吸収、放出を考える。下側準位 En にある原子は輻射場の吸収によって上側準位 Em に励起するが、その単位時間当たりの遷確率 Rnm は下側準位にある原子数と輻射強度に比例し、 R n m = B n m u ( ν , T ) N n {\displaystyle R_{nm}=B_{nm}u(\nu ,T)N_{n}} と表される。この吸収過程は誘導吸収と呼ばれる。逆に上側準位 Em にある原子は輻射場の放出によって、下側準位 En に遷移する。放出の過程には周囲に輻射場が存在せずとも生じる自然放出と輻射場によって誘起される誘導放出が存在する。自然放出は上側準位の原子数、誘導放出は上側準位の原子数と輻射強度の積に比例することから、下側準位への遷移率 Rmn は R m n = A m n N m + B n m u ( ν , T ) N m {\displaystyle R_{mn}=A_{mn}N_{m}+B_{nm}u(\nu ,T)N_{m}} と表される。平衡状態では詳細釣り合いの条件 Rmn=Rnm が成り立つことから、 u ( ν , T ) = A m n N m B n m N n − B m n N m = A m n B n m g n g m e E m − E n k T − B m n {\displaystyle u(\nu ,T)={\frac {A_{mn}N_{m}}{B_{nm}N_{n}-B_{mn}N_{m}}}={\frac {A_{mn}}{B_{nm}{\frac {g_{n}}{g_{m}}}e^{\frac {E_{m}-E_{n}}{kT}}-B_{mn}}}} が得られる。u(ν, T) が温度の増大とともに無限大になる条件から g n B n m = g m B m n {\displaystyle g_{n}B_{nm}=g_{m}B_{mn}} であり、さらに u(ν, T)=ν3f(ν/T) の関数形であるというウィーンの法則の結果から、 A m n B m n = α ν 3 {\displaystyle {\frac {A_{mn}}{B_{mn}}}=\alpha \nu ^{3}} (α: 定数) とボーアの振動数条件 E m − E n = h ν m n {\displaystyle E_{m}-E_{n}=h\nu _{mn}} が成り立つ。その帰結としてプランクの公式 u ( ν , T ) = α ν 3 e h ν / k T − 1 {\displaystyle u(\nu ,T)={\frac {\alpha \nu ^{3}}{e^{h\nu /kT}-1}}} が得られる。
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