加工貿易の理論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/02/17 13:43 UTC 版)
日本は、明治中期以降、基本的に加工貿易に依存してきた。日本にとって、また世界の多くの国にとって重要であるにもかかわらず、加工貿易の理論は不充分な状態にとどまっている。大山道広は、次のように指摘している。 国際貿易論の教科書で解説されている標準的な貿易モデルは、消費財の交換を内容とする水平貿易のモデルである。しかし、現実には原料と消費財の交換を主とする垂直的な貿易も重要である。日本型の加工貿易はまさにそのような貿易の一つの典型である。 先進国と発展途上国の間の垂直貿易vertical tradeの大きな部分が製品と一次産品との交換をとっている。先進国の間でもある程度同様な貿易が行なわれている。 日本語で「加工貿易」を論文題名に掲げた理論論文は、大山道広の2論文にとどまる。世界的にも21世紀に入り加工貿易(processing trade)に関する関心が高まっているが、多くは中国の加工貿易の進展に刺激されたものであり、理論的分析の枠組みが得られているわけではない。 加工貿易は、現在では、中間財貿易、投入財貿易(input trade)、フラグメンテーション(fragmentation)、オフショアリング、グローバル・サプライ・チェーンなどの題目でも研究されている。ただし、加工貿易は輸入した原材料・部品等を加工して再輸出することであり、輸入国の中間財輸入に含まれるが、輸出に際しては最終財に分類されることがありうる。 加工貿易の実証的研究の豊富さに比べて、理論的研究は少ない。例外として池間誠・東田啓作などがある。投入財貿易の画期的な著作とされるジョーンズのGlobalization and input tradeも、理論的課題を提示した意義は大きいが、特定のパターンを前提としている。中間財貿易あるいは投入財貿易を含む一般理論は、リカード理論の拡張として、2007年に塩沢由典により初めて構築された。その解説として、塩沢由典(2014)「新しい国際価値論とその応用」、塩沢由典『リカード貿易問題の最終解決』がある。この理論は、中間財貿易の一般理論であるため、加工貿易や近年注目を集めている国際付加価値連鎖の発生も説明可能である。
※この「加工貿易の理論」の解説は、「加工貿易」の解説の一部です。
「加工貿易の理論」を含む「加工貿易」の記事については、「加工貿易」の概要を参照ください。
- 加工貿易の理論のページへのリンク