制度の趣旨と導入の経緯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/12 04:53 UTC 版)
「私的録音録画補償金制度」の記事における「制度の趣旨と導入の経緯」の解説
一般に著作物を複製することは、著作権者の許可なく行うことはできないが、個人的に使用することを目的とした複製については、その規模が零細であって権利者の利益を不当に害するとはいえないし、また仮に規制したとしても、現実に摘発・逮捕するのは困難であることから、自由にかつ無償で行い得るとされている(著作権法30条1項、私的複製。以下特に断らない限り条文は日本の著作権法のもの)。 日本では1970年の時点で、ビデオデッキ、ビデオテープの製品化がなされ、普及することが予見されており、日本音楽著作権協会が録音使用料規定案を作成するなど、著作権料の徴収に向けた準備が進められていた。 その後、技術の発達により、デジタル方式で録音や録画を行うことにより、オリジナルと全く同質の複写が容易に作成できる高性能な機器が登場し、それらが一般家庭に広く普及したことによって、そのような利用方法で音楽・映画等を楽しむ利用者が増えている。これに伴い、個々の利用については零細であっても、全体として見れば無視できないほどの規模で録音・録画がなされるようになった。 そのため、これらの大規模な利用を自由に許していたのでは、権利者が本来得られるはずの利益が得られず利益が不当に害されることになるのではないか、という点が問題となった。特に日本では、レコードからコンパクトディスク(CD)に移行して以来、レンタルレコード店のCDを、デジタル方式で私的録音する利用者が増えたことによって、CDの売り上げ枚数が減少し、本来得られる利益が得られない、といった事態が生じたのである。 この問題を解消するために、西ドイツやアメリカ合衆国では、権利者に対する補償制度を既に導入しており(注:両国に限らず欧米先進国には、日本のようなレンタルレコード店はない。ただし、CDの価格は日本の半額以下と安価であり、再販売価格維持制度も無い)、日本でも同様の措置を講ずるべきではないか?との検討がなされその結果、1992年の著作権法一部改正によって、私的録音録画補償金制度が導入された。 これにより、利用者による私的な録音・録画を自由に許しつつも、その複製が一定の機器・メディアによって行われる場合に限って、権利者に報酬請求権を与え、補償金報酬を得させ、両者の利益の調和を図ることとなった。
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