内部留保の活用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/02 03:34 UTC 版)
2007年の米国金融危機(世界金融危機)とそれに伴う世界経済の急激な後退に際して、日本の大企業は非正規労働者の大規模な解雇・契約解除で対応した。このような情勢下、大企業の内部留保を原資とする資産の一部を、非正規・正規労働者の雇用維持・創出に活用することを検討する議論が起きた。 日本共産党の志位和夫委員長は、「自動車産業は2万人近い人員削減を進めているが、業界の内部留保の0.2%を取り崩しただけで、雇用は維持できる」と訴えている。労働組合の連合も同様の主張をしており、さらに政府でも河村建夫元官房長官が「企業はこういうことに備えて内部留保を持っている」と表明し、共産党の主張する内部留保の活用に同意した麻生太郎副総理は「共産党と自民党が一緒になって賃上げをやろうっていうのは、たぶん歴史上始まって以来」と答弁した。 しかしこれらの議論は、内部留保を、あたかも有効活用されていない資産のごとく論じており、明白に誤りと言える。前述のとおり内部留保は企業の資産の調達元を意味する言葉にすぎず、すでに企業の資産として活用されているうえに、内部留保に相当する資産は、労働者に賃金を支払った残額であり商法上株主に帰属するものであるから、それをさらに労働者に分配するのは背任行為に当たる。共産党と自民党の主張は「赤字になるまで人件費を増やせ」と叫ぶ暴論であって、国民の多くが簿記会計の概念に不案内であることに乗じたデマゴギーである。[要出典] 経済学者の円居総一は「企業の内部留保や多額の対外投資は、政府が勝手に使えるものではない。なぜならそれらのほとんどが、民間のものだからである。企業の内部留保を投資に回せと言っても、政府にできるのはそれを誘導することだけである。企業の内部留保はデフレの産物であり、国内需要を喚起すれば投資に回る」と指摘している。 経済学者の岩田規久男は「デフレである限り、企業が巨額の余剰資金を抱えたままにしていることで、設備投資・消費などが動き出さないといった状況から抜け出せない」と指摘している。
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