先住民の目撃証言の信憑性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/04 07:19 UTC 版)
「モケーレ・ムベンベ」の記事における「先住民の目撃証言の信憑性」の解説
非常に広い地域に、同じ名前で、同じ生物を指すと考えられる古くからの言い伝えが残っているのが特徴である。しかし、その言い伝えとされているものにはいくつかの問題が指摘されている。 ひとつは、モケーレ・ムベンベの名前が指している生物が明確でないことがある点である。例えば、イギリスBBC放送の番組では、サイの絵を見せられた現地人が「モケーレ・ムベンベ!」と叫んだシーンが紹介された。この現地人はその直前に見せられたアパトサウルスの絵には反応しなかった。この人にとってモケーレ・ムベンベは、エメラ・ントゥカ的な生物であったとも考えられる。前述のように、先住民は何種類かの「大きな恐ろしい化け物」を、まとめてこの名で呼ぶ場合がある。かつては、人間に危害を与える何種類もの大型動物、大型のニシキヘビ、サイ、カバ、ワニ、アフリカマナティーなどをまとめて呼んでいた言葉が、伝承の中で、それらの特徴が混ざり合い、キマイラのような架空の動物を指すように変わっていった可能性がある。すると、その伝承を聞いた者は、それらの動物の体の一部だけで、モケーレ・ムベンベを見た、と合点してしまう可能性もある。また、調査者が言い伝えを聞きとり、まとめ上げる段階で、各地の先住民が同じ名前を使っているのに惑わされ、実はいろいろな動物のことを言っていることに気づかず、仮想の1つの動物像を作り上げてしまった可能性もある。 また、探検家による証言の収集過程で、バイアスがかかっていた可能性がある。1900年代初めから繰り返された調査行で、探検隊によって恐竜の竜脚類の絵が繰り返し見せられたことにより、これが新たなモケーレ・ムベンベ像を形成した可能性である。 更に1980年代以降は、探検隊が現地に与える経済効果が意識的、無意識的に現地人、更には国からも注目されてきたことが指摘されている。当時、外貨に乏しかったコンゴに、外貨を落としていく探検隊を呼び寄せる「謎の生物」が観光資源として注目されていたという。観光資源が今後も持続するのに有利な証言が誘導されていた可能性を否定することはできない。 これらのことから、今後は、現地の伝承を新たに収集すること、中立的な視点に立った目撃証言を得ることは、ほぼ不可能であるといわれている。
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