充当理論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 02:20 UTC 版)
言語帝国主義論を拒絶する人の中には、英語の世界的な拡大の現象は、世界各地でローカルな目的で英語が使われるという充当の枠組みを示すことでより良く理解できるようになると主張する人もいる。上述で引用したナイジェリアの例 (Bisong 1995) に加えて、以下のような例が挙げられる。 非英語圏のデモ参加者は、よく世界中のテレビ視聴者へ向けて彼らの要求を伝えるために英語で書かれた標識を使う。時にその人たちは、自分たちが掲げている標識に書かれていることを理解していないことさえありうる。 Bobda (1997) は、いかにカメルーンが単一文化的・アングロ・サクソン中心的な英語教育の方法から考えを変えてきたか、そして徐々に教材をカメルーンの状況に充当していったかを教えてくれる。取り扱われている非西洋的なトピックの例を挙げれば、アミールの掟、伝統薬や一夫多妻制などがある (ibid: 225)。 Bobda (ibid: 234) は二文化教育に賛成論を唱える。つまり、彼はカメルーンと英米の両方の文化を提示したいのである。 Kramsch & Sullivan (1996) は、いかに西洋式の教育方法論と教科書がヴェトナムの土地文化に合うように充当していったかを述べている。 パキスタンの教科書 Primary Stage English は、西洋人の耳にはかなり対外強硬主義的と響きそうな Pakistan My Country・Our Flag・Our Great Leader (Malik 1993: 5, 6, 7) のような学課を含んでいる。しかしながら、土着の文化内で英語教育、愛国心とムスリムの信条との関係を打ち立てることは、英語教育の目的の一つと見て取れる。なぜなら、en:Punjab Textbook Board (PTBB) の議長は、「PTBB はこれらの教科書を通じて生徒にイスラーム的な価値観への愛着や、生徒の祖国のイデオロギーの前線を守るための自覚を植え付けられるように注意している」(Punjab Text Book Board 1997) と率直に述べている。 以上のような英語の国際化も、英語の母語話者に新しい可能性をもたらすかもしれない。McCabe は以下のような文章を練り上げた。 ・・・二つの世紀にわたって、我々が、新規の市場・・・の熱烈な追跡の中で我らの言語と我らの慣習を輸出してきたという事実から見れば、我々は今、我らの言語と慣習は我々の元に戻されたのだが、他者 が使えるそれらは変わってしまったので・・・だから、我らの言語と文化は新しい可能性、新たな矛盾を発見するのだと分かる (1985: 45)。
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