元来のアティヤ-セーガルの公理化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/16 10:15 UTC 版)
「位相的場の理論」の記事における「元来のアティヤ-セーガルの公理化」の解説
マイケル・アティヤは、グラミエ・セーガル(英語版)の提案した共形場理論の公理(後日、セーガルは、(Segal 2001) にまとめた)や、ウィッテンの超対称性の幾何学的な意味についての考え方(Witten 1982)に動機付けられて、一連の位相的場の理論の公理を示唆した(Atiyah 1988)。アティヤの公理系は、微分可能写像(位相同型写像、もしくは、連続写像)で境界を張り合わせることで構成されるが、一方、セーガルの公理系は、共形写像で構成されている。シュワルツタイプは、ウィッテンタイプの全体をとらえていることが明らかではないにもかかわらず、これらの公理ではシュワルツタイプのほうが、数学的にはうまく取り扱われた。基本的なアイデアは、TQFT とは、あるコボルディズムの圏からベクトル空間の圏への函手であるということである。 実際、Atiyahの公理と呼ばれて当然である公理系には、2つの異なったセットがあり、基本的には、TQFTを研究するときに一つの固定した n 次元リーマン/ローレンツ時空 M を考えるのか、それとも全ての n 次元の時空を同時に考えるのかの違いがある。 Λ {\displaystyle \Lambda } を単位元 1 を持つ可換環とする。(現実には、ほとんどの場合、Λ として Z, R もしくは C としている。)元々、アティヤは以下に見るように基礎となる環 Λ {\displaystyle \Lambda } の上で定義された d 次元の位相的場の理論の公理を提案している。この提案は、位相空間の圏としても特徴付け(英語版)に似ている。 (A) 向きづけられた閉じた d 次元微分可能多様体 Σ {\displaystyle \Sigma } と結びついた有限生成 Λ {\displaystyle \Lambda } -加群 Z ( Σ ) {\displaystyle Z(\Sigma )} (ホモトピー性の公理に対応), (B) 向きづけられた (d+1) 次元微分可能多様体(境界を持つ) M {\displaystyle M} と結びついた元 Z ( M ) ∈ Z ( ∂ M ) {\displaystyle Z(M)\in Z(\partial M)} (加法性公理に対応). これらのデータは次のような公理となる。 (1) Z {\displaystyle Z} は Σ {\displaystyle \Sigma } と M {\displaystyle M} の微分同相については 函手的(functorial) である。 (2) Z {\displaystyle Z} は 対合(involutory)的、すなわち、 Z ( Σ ∗ ) = Z ( Σ ) ∗ {\displaystyle Z(\Sigma ^{*})=Z(\Sigma )^{*}} である。ここに Σ ∗ {\displaystyle \Sigma ^{*}} は向きづけを逆にした Σ {\displaystyle \Sigma } であり、 Z ( Σ ) ∗ {\displaystyle Z(\Sigma )^{*}} で双対加群を表すことにする。 (3) Z {\displaystyle Z} は 乗法的(multiplicative)である. さらに、アティヤは2つの公理(4)と(5)をこれらに加えた。 (4) d 次元の空な多様体について Z ( ϕ ) = Λ {\displaystyle Z(\phi )=\Lambda } とし、(d+1) 次元の空な多様体については Z ( ϕ ) = 1 {\displaystyle Z(\phi )=1} とする。 もしも閉じた多様体 M {\displaystyle M} 対し Z ( M ) {\displaystyle Z(M)} を M {\displaystyle M} の数値的不変量とみなすと、境界を持つ多様体に対し Z ( M ) ∈ Z ( ∂ M ) {\displaystyle Z(M)\in Z(\partial M)} を「相対的」不変量と考えることができる。 f : Σ × I → Σ × I {\displaystyle f:\Sigma \times I\rightarrow \Sigma \times I} を微分同相を保つ向きづけで、 Σ × I {\displaystyle \Sigma \times I} の端を f {\displaystyle f} により同一視する。これが多様体 Σ f {\displaystyle \Sigma _{f}} を与え、この公理は Z ( Σ f ) = Trace Σ ( f ) {\displaystyle Z(\Sigma _{f})={\text{Trace}}\Sigma (f)} ということを意味している。ここに Σ ( f ) {\displaystyle \Sigma (f)} は Z ( Σ ) {\displaystyle Z(\Sigma )} の引き起こされた自己同型である。 (5) Z ( M ∗ ) = Z ( M ) ¯ {\displaystyle Z(M^{*})={\overline {Z(M)}}} である。(エルミート性公理) 同値であるが、 Z ( M ∗ ) {\displaystyle Z(M^{*})} が Z ( M ) {\displaystyle Z(M)} の随伴作用素である。 境界 Σ {\displaystyle \Sigma } を持つ多様体 M {\displaystyle M} に対し、共通部分 M ∪ Σ M ∗ {\displaystyle M\cup _{\Sigma }M^{*}} が常に常に閉じた多様体とできることに注意すると、(5) は、 Z ( M ∪ Σ M ∗ ) = | Z ( M ) | 2 {\displaystyle Z(M\cup _{\Sigma }M^{*})=|Z(M)|^{2}} であることを示している。この右辺はエルミートな(不定値でもよいが)計量でのノルムとなっている。
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