位相的場の理論
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位相的場の理論(いそうてきばのりろん)もしくは位相場理論(いそうばりろん)あるいはTQFTは、位相不変量を計算する場の量子論である。[1]
TQFTは物理学者により開拓されたにもかかわらず、数学的にも興味を持たれていて、結び目理論や代数トポロジーの 4次元多様体の理論や代数幾何学のモジュライ空間の理論という他のものにも関係している。サイモン・ドナルドソン, ヴォーン・ジョーンズ, エドワード・ウィッテン, や マキシム・コンツェビッチ は皆、フィールズ賞 をとり、位相的場の理論に関連した仕事を行っている。
物性物理学では、位相的場の理論は、分数量子ホール効果や、ストリングネット凝縮状態や他の強相関量子液体状態のような、トポロジカル秩序の低エネルギー有効理論である。
概要
位相的場の理論では、相関関数が時空の計量に依存しない。このことは、(トポロジーを変えない範囲で)時空の形が変わっても理論自体は不変であることを意味する。もし時空が曲がったり、収縮したりした場合でも、相関関数は変化しない。結局、それらは位相不変量となる。
位相的場の理論は素粒子物理学で使われるミンコフスキー時空にはさほど興味はない。ミンコフスキー空間は、可縮な空間であるから、その上の TQFT は自明な位相不変量のみの計算結果となる。結局、TQFTは普通、例えばリーマン面のような、曲がった時空上で研究される。知られている位相的場の理論の大半は、5次元未満の時空の上で定義されている。いくらか高い次元の理論も存在しそうであるが、あまりよく知られてはいない。
量子重力は(ある適当な意味で)背景独立であると信じられていて、TQFT は背景独立な場の量子論の例を提供する。これはこのクラスのモデルの理論的な研究を前進させるという証である。
(注意事項: TQFT は有限の自由度しか持たないと言われることがある。これは基本的な性質ではない。物理学者や数学者が研究している例の大半は、これが有限の自由度を持つこということがあるが、しかし、必ずしも有限の自由度を持つ必要はない。もし無限次元の射影空間をターゲット空間とする位相的シグマモデルが定義されたとすれば、それは可算無限個の自由度を持つ位相的場の理論である。
位相的場の理論のタイプ
知られている位相的場の理論は、2つの一般的なクラスへ分けられる。ひとつはシュワルツタイプの TQFT であり、もうひとつはウィッテンタイプの TQFT である。ウィッテンタイプの TQFT はコホモロジカルな場の理論としても知られている。(Schwarz 2000) を参照。
シュワルツタイプ TQFT
シュワルツタイプ TQFTでは、系の相関函数あるいは分配函数は、計量独立な作用汎関数の経路積分として与えられる。例えば、BFモデル(BF model)では、時空は2次元多様体 M であり、観測量は2-形式 F と補助スカラー場 B とそれらの微分から構成される。(経路積分を決定する)作用は、
全ての時空を同時に考える、 をより大きなカテゴリで置き換える必要がある。 をボルディズムのカテゴリとする。すなわち、射が境界を持った n-次元多様体であり、対象(object)が n 次元多様体の境界の連結成分であるようなカテゴリとする。(任意の -次元多様体が 対象(object)として現れるかもしれない) 上のように、2つの射が の中で同値とは、それらがホモトピックであり、商カテゴリ を形成する場合をいう。 はそれらの直和から作られるボルディズムへ2つのボルディズムを持っていく操作の下にモノイダル函手である。すると n-次元多様体上の位相的場の理論は、 からベクトル空間のカテゴリへの函手である。そのときは、ベクトル空間のテンソル積をボルディズムの直和とすることで構成される。
例えば、(1+1) 次元ボルディズム (1次元多様体の間の2次元ボルディズム)に対して、パンツのペアに結び付く写像は、積もしくは余積をもたらし、境界の成分がどのようにグループ化されるかとは独立である – 可換もしくは余可換である。一方、ディスクに結び付いた写像は、コユニット (トレース) もしくはユニット (スカラー)をもたらし、境界のグループ化とは独立であるので、(1+1) 次元の位相的場の理論は、フロベニウス代数に対応する。
さらに最近、上記のボルディズムで関係づけられた4次元、3次元、2次元の多様体を同時に考えることで、豊富で重要な例が得られている。
その後の発展
位相的場の理論の発展をみると、それが非常に多くの応用を持っていることが分かる。応用先は、サイバーグ-ウィッテン理論や位相的弦理論、結び目理論と量子論との関係や量子結び目不変量である。さらに、数学と物理の双方の非常に興味深い対象を提供している。
最近の非常に興味をもたれていることとして、位相的場の理論の非局所作用素がある。(Gukov & Kapustin (2013)) 弦理論を基本的なものとすると、非局所的な位相場理論を計算可能な局所弦理論で充分な近似することができる非物理的モデルと見なすことができる。
脚注
参考文献
- Atiyah, Michael (1989), “Topological quantum field theories”, Publications Mathématiques de l'IHÉS 68 (68): 175–186, doi:10.1007/BF02698547, MR1001453
- Witten, Edward (1982), “Super-symmetry and Morse Theory”, J. Diff. Geom. 17: 661–692
- Schwarz, Albert (2000), TOPOLOGICAL QUANTUM FIELD THEORIES
- Segal, Graeme (2001), “Topological structures in string theory”, The Royal Society 359: 1389-1398, doi:10.1098/rsta.2001.0841
- Lurie, Jacob, On the Classification of Topological Field Theories
- Witten, Edward (1988a), “Topological quantum field theory”, Communications in Mathematical Physics 117 (3): 353–386, Bibcode: 1988CMaPh.117..353W, doi:10.1007/BF01223371, MR953828
- Witten, Edward (1988b), “Topological sigma models”, Communications in Mathematical Physics 118 (3): 411–449, Bibcode: 1988CMaPh.118..411W, doi:10.1007/bf01466725
- Atiyah, Michael (1988). “New invariants of three and four dimensional manifolds”. Proc. Symp. Pure Math., 48, American Math. Soc. 48: 285–299.
- Gukov, Sergei; Kapustin, Anton (2013). “Topological Quantum Field Theory, Nonlocal Operators, and Gapped Phases of Gauge Theories”. JHEP. doi:10.48550/arXiv.1307.4793 . On arxiv url=http://arxiv.org/abs/1307.4793
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- 河野, 俊丈 (1998), “場の理論とトポロジー”, 岩波講座 現代数学の展開
関連項目
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