位相的場の理論とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 位相的場の理論の意味・解説 

位相的場の理論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/28 07:31 UTC 版)

位相的場の理論(いそうてきばのりろん)もしくは位相場理論(いそうばりろん)あるいはTQFTは、位相不変量を計算する場の量子論である。[1]

TQFTは物理学者により開拓されたにもかかわらず、数学的にも興味を持たれていて、結び目理論代数トポロジー4次元多様体の理論や代数幾何学モジュライ空間の理論という他のものにも関係している。サイモン・ドナルドソン, ヴォーン・ジョーンズ, エドワード・ウィッテン, や マキシム・コンツェビッチ は皆、フィールズ賞 をとり、位相的場の理論に関連した仕事を行っている。

物性物理学では、位相的場の理論は、分数量子ホール効果や、ストリングネット英語版凝縮状態や他の強相関量子液体英語版状態のような、トポロジカル秩序英語版の低エネルギー有効理論である。

概要

位相的場の理論では、相関関数が時空の計量に依存しない。このことは、(トポロジーを変えない範囲で)時空の形が変わっても理論自体は不変であることを意味する。もし時空が曲がったり、収縮したりした場合でも、相関関数は変化しない。結局、それらは位相不変量となる。

位相的場の理論は素粒子物理学で使われるミンコフスキー時空にはさほど興味はない。ミンコフスキー空間は、可縮な空間英語版であるから、その上の TQFT は自明な位相不変量のみの計算結果となる。結局、TQFTは普通、例えばリーマン面のような、曲がった時空上で研究される。知られている位相的場の理論の大半は、5次元未満の時空の上で定義英語版されている。いくらか高い次元の理論も存在しそうであるが、あまりよく知られてはいない。

量子重力は(ある適当な意味で)背景独立であると信じられていて、TQFT は背景独立な場の量子論の例を提供する。これはこのクラスのモデルの理論的な研究を前進させるという証である。

(注意事項: TQFT は有限の自由度しか持たないと言われることがある。これは基本的な性質ではない。物理学者や数学者が研究している例の大半は、これが有限の自由度を持つこということがあるが、しかし、必ずしも有限の自由度を持つ必要はない。もし無限次元の射影空間をターゲット空間とする位相的シグマモデルが定義されたとすれば、それは可算無限個の自由度を持つ位相的場の理論である。

位相的場の理論のタイプ

知られている位相的場の理論は、2つの一般的なクラスへ分けられる。ひとつはシュワルツタイプの TQFT であり、もうひとつはウィッテンタイプの TQFT である。ウィッテンタイプの TQFT はコホモロジカルな場の理論としても知られている。(Schwarz 2000) を参照。

シュワルツタイプ TQFT

シュワルツタイプ TQFTでは、系の相関函数あるいは分配函数は、計量独立な作用汎関数の経路積分として与えられる。例えば、BFモデル(BF model)では、時空は2次元多様体 M であり、観測量は2-形式 F と補助スカラー場 B とそれらの微分から構成される。(経路積分を決定する)作用は、

パンツのペア英語版(1+1) 次元ボルディズムで、2 次元TQFTの積もしくは余積に対応している。

全ての時空を同時に考える、 をより大きなカテゴリで置き換える必要がある。 をボルディズムのカテゴリとする。すなわち、射が境界を持った n-次元多様体であり、対象(object)が n 次元多様体の境界の連結成分であるようなカテゴリとする。(任意の -次元多様体が 対象(object)として現れるかもしれない) 上のように、2つの射が の中で同値とは、それらがホモトピックであり、商カテゴリ を形成する場合をいう。 はそれらの直和から作られるボルディズムへ2つのボルディズムを持っていく操作の下にモノイダル函手英語版である。すると n-次元多様体上の位相的場の理論は、 からベクトル空間のカテゴリへの函手である。そのときは、ベクトル空間のテンソル積をボルディズムの直和とすることで構成される。

例えば、(1+1) 次元ボルディズム (1次元多様体の間の2次元ボルディズム)に対して、パンツのペア英語版に結び付く写像は、積もしくは余積をもたらし、境界の成分がどのようにグループ化されるかとは独立である – 可換もしくは余可換である。一方、ディスクに結び付いた写像は、コユニット (トレース) もしくはユニット (スカラー)をもたらし、境界のグループ化とは独立であるので、(1+1) 次元の位相的場の理論は、フロベニウス代数に対応する。

さらに最近、上記のボルディズムで関係づけられた4次元、3次元、2次元の多様体を同時に考えることで、豊富で重要な例が得られている。

その後の発展

位相的場の理論の発展をみると、それが非常に多くの応用を持っていることが分かる。応用先は、サイバーグ-ウィッテン理論英語版位相的弦理論結び目理論と量子論との関係や量子結び目不変量である。さらに、数学と物理の双方の非常に興味深い対象を提供している。

最近の非常に興味をもたれていることとして、位相的場の理論の非局所作用素がある。(Gukov & Kapustin (2013)) 弦理論を基本的なものとすると、非局所的な位相場理論を計算可能な局所弦理論で充分な近似することができる非物理的モデルと見なすことができる。

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ 適当な参考書が日本語にはないが、(河野 1998)を挙げた。
  2. ^ (河野 1998)のxiiページにBorel-Weilの定理とシンプレクティック幾何学のことが記載されている。同趣旨と言ってもよい。
  3. ^ (河野 1998)の第二章は「Jones-Witten 理論」と題して、詳細な記述がある。共形場理論についての記述もある。第三章は「Chern-Simons摂動理論である。

参考文献

Template:Quantum field theories

  • 河野, 俊丈 (1998), “場の理論とトポロジー”, 岩波講座 現代数学の展開 

関連項目




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「位相的場の理論」の関連用語










10
56% |||||

位相的場の理論のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



位相的場の理論のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの位相的場の理論 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS