距離函数
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/06 01:49 UTC 版)
距離関数(きょりかんすう、distance function)、距離計量(きょりけいりょう)あるいは単に距離(きょり、distance)、計量(けいりょう、metric)は、集合の二点間の距離を定義する関数である。 距離が定義されている集合を距離空間(きょりくうかん、metric space)と呼ぶ。
距離はその集合上の位相(距離位相)を誘導するが、必ずしもすべての位相空間が距離位相によって生成されるわけではない。
ある位相空間の位相を距離によって記述することができるとき、その位相空間は距離化可能 (metrizable) であるという。
- 計量というときは、距離だけでなくそこから規定される種々の幾何学構造をひとまとまりのものとして考えているという気分が入っている。
- 微分幾何学では計量テンソル (metric tensor) の意味で術語 metric を用いることがある。
定義
集合 X 上の函数
- d: X × X → R
(ここで、R は実数全体の成す集合)が距離函数であるとは、x, y, z を X の任意の元として、以下の条件
- d(x, y) ≥ 0 (非負性)
- d(x, y) = 0 if and only if x = y (同一律)
- d(x, y) = d(y, x) (対称律)
- d(x, z) ≤ d(x, y) + d(y, z) (劣加法性あるいは三角不等式)
が満たされることを言う(条件 1, 2 をあわせて正定値性ということもある)。非負性をいう条件 1 は他の条件から導くことができる(上の三角不等式で z = x とした式に同一律と対称律を適用すれば非負性が導かれる)ので、距離函数だけを考えるならば条件 1 を必ずしも別項立てる必要はないが、適当な一般化を考えたりする際には分けておくほうが有効なこともある。
これらの条件は直感的な距離の概念が持っている性質を抽出したものである。たとえば、相異なる2点の間には正の距離があり、距離によって識別できないならば同じ点(identity of indiscernibles; 不可識別者同一)である。また、ある点 x から別の点 y へ行く距離と、辿り方を逆にした y から x までの距離とは同じである。三角不等式は、ある点 x から別の点 z へ直接行く場合と比べて、xからzへ行くまでに『そこを経由したほうが近くなるような点y』はXのどこにも存在しないということである。ユークリッドは「二点間の最短距離は直線である」と述べているが、これはユークリッド幾何学における三角不等式を表したものに他ならない。
付加構造を持つ距離
三角不等式よりもさらに強い条件
- d(x, z) ≤ max( d(x, y), d(y, z) )
が満たされる距離は超距離と呼ばれる。
距離空間 X 上の距離 d が固有 (intrinsic; 内在的) であるとは、X の任意の2点 x, y が d(x, y) にいくらでも近い弧長を持つ曲線で結ぶことができるときに言う。
加法 + : X × X → X の定義された集合上で、距離 d が平行移動不変であるとは
- d(x, y) = d(x + a, y + a)
が X の任意の x, y および a について成立することを言う。
例
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