保留地の現在
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/01 06:39 UTC 版)
保留地には、一定の自治権を認めた条約規定に基づき、BIA直轄の「部族評議会」、または「部族議会」が組織されていて、これは一般に「部族政府」と呼ばれる。「イロコイ連邦」が自主独立を保てているのは、「部族議会」を持たず、連邦と貸し借りのない状態を維持しているからであるといわれる。 保留地は「連邦政府」との条約規定によって存在しているが、その土地は「州政府」の管轄内にある。このため、部族政府は「自治政府」、「独立国家」を名乗りながらも、常に連邦と州の双方を相手に交渉ごとを行わなければならない矛盾を負わされている。(この状況は条約に違反している) ほとんどすべての保留地は産業を持てず、貧困にあえいでいる。また、保留地で生活する限り、そのインディアンにはわずかながら条約規定に基づいた年金が入るため、これに頼って自立できない人々も多い。失業率は半数を超え、アルコール依存症率は高い。保留地には産業や就労先がないため、年金を捨て、保留地外に出て生活する人たち(シティー・インディアン)も多い。 20世紀頃までのアメリカではネバダ州とニュージャージー州以外でカジノが実質禁止だった。対して、保留地内では自治権を認めた条約規定で設立可能であり、それを活用することでインディアン・カジノ(「現代のバッファロー」とも称される)として成功した保留地もある。しかし、州が州法を盾にギャンブル事業の認可をしないために「最後の切り札」のカジノを持てず、身動きできない部族も多い。これも連邦法と州法の双方から縛られるインディアン保留地の矛盾を示す事例のひとつである。 現在の連邦政府の方針としては、1950年代からの流れとして、部族の意向を無視して「保留地」を解消していこうという方向にある(これは条約違反である)。「インディアン」という特別な存在ではなく、「アメリカ市民」として納税させ、国民の義務を負わせるというのが、当初からの政府の命題だったからである。これに沿った「インディアン寄宿学校」による強制同化政策によってインディアンの同化が進み、20世紀初頭からすでに、部族独自の純血性、民族性は薄れたとして、様々な部族が絶滅認定され、保留地を没収されていった。ただし、この揺れ戻しとして、近年再び部族の結集を図り、「保留地」の再獲得を果たした例もある。
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