代船問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 15:27 UTC 版)
日本国内における川崎重工業は、「ライセンス取得当時に想定した需要に近い船会社、航路に販売できた」としており、1995年(平成7年)以降、新造は行われていない。その後の航路開設、増便、機材更新は中古艇の融通によってまかなわれている。運用中の初期建造艇は、就航から40年 - 35年を経過して耐用年数をむかえており、東海汽船は、1981年(昭和56年)就航の「セブンアイランド夢」を代替する際、新造船を希望したが実現せず、JR九州が運航していた1994年(平成6年)就航の「ビートル5」を購入、「セブンアイランド大漁」として、2015年(平成27年)1月に就航させた。 特殊な構造のため、建造には専用の生産設備と部品の供給が必要で、各種搭載機器、ウォータージェットシステムの供給メーカーの最小ロットが10基、すなわち5隻分となっているため、川崎重工業は建造を再開する場合、最低でも5隻程度の受注が必要としている。運航各社が単独でロットを満たすことは困難であるため、共同発注も検討されているが、船価の上昇と厳しい経営状況から実現していなかった。 しかし2017年(平成29年)になって、東海汽船が25年ぶりに川崎重工に新造船を発注した。これは、船齢36年を迎える東海汽船のジェットフォイル「セブンアイランド虹」の代替を考えたもので、数が集まらないと生産再開が難しいとされるウォータージェットシステムについては、就航船の修理用として確保していたものを流用した。 建造費用は、推進システムなどが従来と同等でありながら、51億円と25年前に比べてかなり高額になっているが、就航先の伊豆諸島は土砂災害や火山災害などのリスクを抱える地域であることから、ジェットフォイルが災害対応に有用と判断され、東京都から船価の45 %にあたる23億円の補助金が付いた。また、同船外観のグラフィックデザインには2020年東京オリンピックのエンブレムデザイナーでもある野老朝雄が起用された。 東海汽船では、この「虹」の代替でジェットフォイルの建造を終了するつもりはなく、さらに「セブンアイランド愛」などの後継船建造を進めたいという希望を持っており、佐渡汽船、JR九州、九州郵船、鹿児島商船など、今回の新造をきっかけにジェットフォイル運航各社が足並みをそろえられないかどうか、検討を求めている。 一方で川崎重工業も「当社は今後とも、国内の離島航路をはじめとする高速海上交通の維持・発展のため、ジェットフォイルの建造に積極的に取り組んでいきます。」との声明をホームページ上で発表している。通常の船舶は中国や韓国との価格競争が激しいため、国内で建造する船舶をジェットフォイルなどの付加価値の高い船にシフトする方針もある。
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