人為的に加えられた誤差とその解除
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 07:23 UTC 版)
「グローバル・ポジショニング・システム」の記事における「人為的に加えられた誤差とその解除」の解説
1990年から2000年までは、アメリカ軍の軍事上の理由(敵軍に利用されることを防止する)で、C/Aコードにおいて民間GPS向けのデータに対して、故意に誤差データを加える操作(Selective Availability、略称 SA)が行われ、精度が100m程度に落とされていた。 SAが加えられていた時から、既にGPSは民生用として有用であることが知られていたため、2000年5月2日4時5分(協定世界時)から、アメリカ合衆国大統領ビル・クリントンは「GPS技術を広く役立てて欲しい」という主旨で、これを解除した。競合技術であるガリレオ(EUが主体となって推進している)が提案された理由のひとつに、GPSのSAによる誤差により、民生用で精度が上がらないということがあるが、これに対して優位を保ち続け、イニシアチブを取るというアメリカ合衆国連邦政府の意図も含まれている。また民間GPS機器の軍事転用により、調達コストを抑える目的もあると見られている。SA解除以降は、民間GPSでもC/Aコードの技術的な限界までの精度が得られるようになっている。 2000年以降は、米国の政策上の必要に応じて、有事があった際に特定地域で精度低下の措置がとられる可能性があるとされていた。しかし、ジョージ・W・ブッシュとアメリカ国防総省は2007年9月18日に、次世代GPS(GPS III)にはSA機能を搭載しない(正確には、「SAを持つ衛星を調達しない」)との大統領令を発表した。したがって、この決定が将来覆されない限り、SAの操作は永久に実施されないこととなった。 多くの天文観測設備では、天体追尾にGPSに同期させることで補正するクォーツ時計やルビジウム時計を用いている。このため、アメリカ合衆国が秘密裏にSAを加えようとしても、少なくともSAが加えられたこと自体はエラーとして検出される。
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