下戸遺伝子
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 13:47 UTC 版)
人種ごとのヌクレオチドの相違の数の見積もり、および人種間のNet Nucleotideの相違。人類遺伝学の宝来聡(国立遺伝学研究所)による。 コーカソイド(口数=20)モンゴロイド(口数=71)ネグロイド(口数=10)コーカソイド 0.0094 0.0012 0.0028 モンゴロイド 0.0128 0.0137 0.0015 ネグロイド 0.0194 0.0203 0.0238 主要な人種間の遺伝の間隔と有効な発散の時間。根井正利ペンシルベニア大学教授による。 比較タンパク質 (62位置 )血液型 (23位置 )合計 (85位置 )有効な発散の時間(年)コーカソイド/モンゴロイド 0.011 0.043 0.019 41000 ± 15000 コーカソイド/ネグロイド 0.030 0.038 0.032 113000 ± 34000 ネグロイド/モンゴロイド 0.031 0.096 0.047 116000 ± 34000 近年のDNA分析では、モンゴロイドとその他人種との混血度を検証する手段として、二つ有るアセトアルデヒド脱水素酵素 (ALDH) のうちALDH2の突然変異(下戸遺伝子)をマーカー遺伝子とする方法が知られる。下戸遺伝子とは、ALDH2の487番目(N末端のシグナルペプチド17残基を考慮した場合は504番目に当たる)のアミノ酸を決めるコドンがGAALysからAAAGluに変化したものである(Aはアデニン、Gはグアニン)。この遺伝子は2万年程前に突然変異によって生じたとされ、特に新モンゴロイドに特有であり、この遺伝子を持つということは、「新モンゴロイド」であるか、かつて混血がおこったことの証明となる。。篠田謙一によれば、その後のデータの蓄積からALDH2変異型遺伝子の発生は中国南部付近で、中国南部と北部で好まれる酒の違いにも反映されている。全く酒が飲めない下戸 (Type AA) の人々—すなわち「下戸遺伝子」を二つ持つのは、「モンゴロイド」に類される人々のうちの5%以下である。下戸遺伝子(正しくはALDH2の遺伝子)の持ち主はAAとAGであり、遺伝子頻度についてハーディー・ワインベルクの法則が成立する場合、AAが5%ならAGは2 (10-√5) √5≒35%、AAとAGで約40%になる。AGはAAより強いがGGより弱く、下戸ではないが酒豪でもなく、「モンゴロイド」以外と比較すれば酒に弱い。 下戸遺伝子の持ち主は中国南部と日本に集中しており、水耕栽培の発祥と推測される中国南部での、水田農耕地帯特有の感染症に対する自然選択の結果ではないかとも推測されている。筑波大学の原田勝二による研究は、日本において九州と東北で下戸遺伝子が少ないという結果を出している。 「酒に弱いタイプ」 (Type AG) は「モンゴロイド」のうちの約45%であるので、上記ハーディー・ワインベルクの法則は成立しない。詳細はハーディー・ワインベルクの法則参照。「モンゴロイド」以外コーカソイド(白人)等の人々は、ほとんどが「酒に強いタイプ」 (Type GG) であり、モンゴロイドとの混血の子孫が想定される地域住民で、そうでないタイプが見つかることもある。
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