一般向け展開
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 21:09 UTC 版)
『十二国記』や『氷菓』、『おいしいコーヒーのいれ方』など、当初はライトノベルレーベルから刊行されたものを一般文芸として売り出しているものもある。ライトノベルレーベルも一般層向けの戦略に力を入れ始めており、各レーベルはアニメ的イラストを入れないハードカバー作品(メディアワークス)や「イラストのないライトノベル」などの発売を行っている。 『十二国記』は少女向けレーベル「講談社X文庫ホワイトハート」から刊行されていたが、たとえ少女小説が装丁やキャラクターの書き方・会話文が男性向けレーベルのライトノベルと同じように見えたとしても、前述のように少女小説は一般文芸に近いレベルの書き方を要求されてきたため、こういった越境は決して不思議な現象ではない。 最近ではライトノベルを読まない層にもライトノベルへの関心は広まっており、全国新聞や雑誌でもライトノベルの書評や特集が掲載されることもある。 テレビドラマ化された『失踪HOLIDAY』や『メイド刑事』や『掟上今日子の備忘録』、映画化された『ブギーポップは笑わない』、テレビドラマ化された後に映画化された『半分の月がのぼる空』などのように、最近では実写化も目立つようになった。また、『All You Need Is Kill』は2014年にトム・クルーズ主演でハリウッドでの実写映画が公開。日本での邦題は『オール・ユー・ニード・イズ・キル』で、キャッチコピーには「日本原作、トム・クルーズ主演。」と銘打たれた。 単行本形式でのライトノベルの発表は、現在かなりの頻度で行われている。 アスキー・メディアワークスは2009年冬に高年齢層向けの「メディアワークス文庫」を設立。当レーベルから刊行された三上延の『ビブリア古書堂の事件手帖』はベストセラーとなりドラマ化もされ、後にライト文芸と呼ばれる分野の代表作となった。 2007年6月からは富士見書房がペーパーバックでのレーベルを開始した。 ファミ通文庫を擁するエンターブレインは、ファミ通文庫から出ていた桜庭一樹の『赤×ピンク』を角川文庫から新装版発売した。 2009年3月には『スレイヤーズ』、『涼宮ハルヒの憂鬱』、『鋼殻のレギオス』など角川系のライトノベルを小学生向けに読みやすくした作品や、いとうのいぢ、okama、鶴田謙二などの人気イラストレーターを起用した作品を含む「角川つばさ文庫」をグループ各社の協力出版形式で創刊した。 集英社も、小学生向けのライトノベルレーベルである「集英社みらい文庫」を2011年4月に刊行開始し、ジャンプJブックス、スーパーダッシュ文庫、コバルト文庫で反響の大きかった作品やオリジナル作品を出している。 早川書房はSF系の、東京創元社はミステリ系のライトノベル作家の作品を刊行している。早川書房は2003年開始のレーベル「次世代型作家のリアル・フィクション」(ハヤカワ文庫JA)で冲方丁、小川一水、桜坂洋、新城カズマなどSF系ライトノベル作家の作品を刊行した。また、野尻抱介の単行本刊行、『微睡みのセフィロト』や『大久保町シリーズ』、『ふわふわの泉』などライトノベルとして刊行された旧作の復刊、藤間千歳・瀬尾つかさ・野﨑まどらSF系の新鋭ライトノベル作家の新作を刊行していた。東京創元社はライトノベル作家としてデビューした桜庭一樹・米澤穂信の作品を刊行し、また谷原秋桜子のライトノベル作品を復刊、新作を刊行していた。表紙イラストには前嶋重機やミギー、竹岡美穂らライトノベル系のイラストレーターを起用していた。 2000年代後半には、桜庭一樹の直木賞、乙一、森川智喜の本格ミステリ大賞、冲方丁の本屋大賞、佐藤友哉の三島由紀夫賞、小野不由美、米澤穂信の山本周五郎賞などのように、ライトノベル出身でありながら一般の文学賞を受賞する者も増えたが、既存のライトノベルレーベルからは「卒業」扱いとなることが多く、必ずしもライトノベルの地位向上には繋がっていない。
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