ロンメルの迂回攻撃
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 15:08 UTC 版)
5月26日14:00重砲の集中的な砲撃とともに、イタリア第10及び第21軍団は連合国軍のガザラ前面の防御陣地に攻撃を開始した。すべての枢軸国軍部隊がこの攻撃に参加したと見せかけるために、ドイツアフリカ軍団及びイタリア第20自動車化軍団の一部の小部隊をこの攻撃に参加させた。この陽動作戦はさらに自動車化部隊が増強され、攻撃地点へ向け北に移動した。しかし、その夕刻から夜陰にまぎれて、すべての装甲及び自動車化部隊はガザラ・ラインの南端の攻撃開始地点に集結した。5月27日の早朝、ロンメルは彼自身の指揮するアフリカ装甲軍―ドイツアフリカ軍団、イタリア第20自動車化軍団、そしてドイツ第90軽師団―を率いて、連合国軍の側面や後方までも地雷原で防御されていると確信されていた防衛線を、側面から南端を迂回するというリスクのある攻撃を開始した。 ロンメルの作戦計画はビル・ハケイムで目論見とは違ってくることとなった。イタリア第20軍団のアリエテ、トリエステの両師団とドイツ第21装甲師団の一部部隊は、ビル・ハケイム南東約 4 mi (6.4 km) の地点を通過する前に、イギリス第7機甲師団インド第3自動車化旅団の激しい砲火を交えた抵抗により大きな損害を出し、3時間足止めされた。マリー・ピエール・ケーニグ(en)指揮下の自由フランス第1旅団が守備していたビル・ハケイムのボックス陣地では、ビル・ハケイム攻略を目指したアリエテ師団が、自由フランス軍が使用した75mm 砲などによる攻撃で大きな損害を出して攻略に失敗してしまった。このため、ビル・ハケイムの存在はロンメルが想定していたよりも重大な問題であったことがはっきりした(ビル・ハケイムの戦いを参照)。 その東側を進んだドイツ第15装甲師団は、布陣の南側に位置していた、いずれもイギリス第7機甲師団に属する、インド第3、イギリス第7自動車化旅団を救援するよう司令された第4機甲旅団と交戦し、兵員に多くの死傷者を出しただけでなく装備に損害を出し、砲の射程が長く、威力の大きいM3グラント中戦車が配備されていたことに驚かされた。この交戦の結果、イギリス第4機甲旅団はエル・アデム方向へ撤退し、エル・アデムの東、ベルハメド (Belhamed) 補給基地で一晩過ごした。 昼近くには、枢軸国軍の装甲部隊はさらに25 mi (40 km)北上し、正午にはイギリス第1機甲師団と接触、激しい戦闘となり、双方に多くの損害を出し、枢軸国軍の勢いが鈍ってきた。 枢軸国軍の最右翼を進んだドイツ第90軽師団は、イギリス第7自動車化旅団とレトマ(Retma) で交戦し、第7自動車化旅団はビル・エル・グビ (Bir el Gubi) へ退却した。第90軽師団は午前中の半ばには再び前進を開始し、ビル・ベウィド (Bir Beuid) 付近でイギリス第7機甲師団司令部と遭遇し、これを蹴散らし、師団長のフランク・メサーヴィーを含む司令部の将校を捕虜としたが、メサーヴィーは従兵のふりをして脱出することができた。しかし、この事態により第7師団はこの後2日間有効な指揮を受けることができなかった。 第90軽師団は計画どおり午前中の半ばにエル・アデム付近に到達し、多くの補給拠点を捕獲した。連合国軍の反応は遅かったものの、午後には激しい戦闘となった。しかし、イギリス第4機甲旅団がエル・アデムに派遣された次の日には、第90軽師団は南西方向へ駆り立てられた。 戦車戦は3日間続き、ビル・ハケイムは抵抗を続け、アフリカ装甲軍は南のビル・ハケイム、北のトブルクの間、西に連合国軍が敷設した広い地雷原の「大釜」と呼ばれる地域に閉じ込められ、ここで北と東から連合国軍の機甲部隊から攻撃を受けることとなった。5月31日の夕刻までにはロンメルの補給物資は絶望的な状況となっていた。その間、ドイツ軍の背後を守る任務のアリエテ戦車師団は、5月29日及び6月第1週の間イギリス機甲旅団の攻撃を何度も退けた。 この行動をドイツ側からは:.mw-parser-output .templatequote{overflow:hidden;margin:1em 0;padding:0 40px}.mw-parser-output .templatequote .templatequotecite{line-height:1.5em;text-align:left;padding-left:1.6em;margin-top:0} フランス軍部隊に対する我々の攻撃に、イギリス軍は驚くほど冷静だった。6月2日にアリエテ師団が単独で行った攻撃に対し、フランス軍部隊は頑強に抵抗した。けれども、ドイツ第21装甲師団の反撃によりようやく掃討された。
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