ロバート・ベイクウェルの手法
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「コリング兄弟」の記事における「ロバート・ベイクウェルの手法」の解説
ロバート・ベイクウェル(Robert Bakewell,1725 - 1795)は「家畜育種の父」と称される人物である。ベイクウェルはイングランド中部のレスター州のディシュレー(Dishley)という村で広い農場を営んでいた。ベイクウェルはそこで、ヒツジやウシなどの品種改良でめざましい成果をあげ、イングランドの「農業革命」(British Agricultural Revolution)の立役者となった。ベイクウェルが創出した主な品種は、ヒツジのリンカーン種(Lincoln sheep)、ウシのロングホーン種(English Longhorn)などである。ベイクウェルの当時としては革新的な品種改良の手法は、ダーウィンの進化論形成に影響を与えたとされている。 ベイクウェルの先進的な手法の一つが、優良個体の選抜である。ベイクウェルはまず、改良の目標となる望ましい性質を厳密に定量化し、その性質を備えた個体だけを選び出すということを行った。 たとえば乳用種の場合、「乳量を多く(large)」したいのか、「上質な乳(rich)」を得たいのか、はっきりする必要がある。これらは両立できないものであり、乳量であれば単位日数あたりの泌乳量を数値化し、質を求めるのであれば栄養分を分析して統計化し、求めようとする優れた形質を明確にするのである。 肉用種であれば、体が大きくて骨が細い個体が歩留まりがよく、生産性が高い。ベイクウェルは解剖学を修め、自ら骨格標本や浸液標本を作って研究を重ねた。そのうえで、背中のラインと腹のラインが平行であること、そして体が長く、四肢が短いことを重要視し、それ以外の部位、例えば頭部などの形状は、肉用種としては重要ではないことを定めた。 さらに生産性を高めるため、家畜が産む子供の数や頻度、成長の速度などを統計化し、生産能力の高い個体を選び出した。また、これらの調査を実施するために、家畜の個体識別や、血統書の作成や管理を行った。当時はまだサラブレッドの血統書の整備も行なわれていない時期であり、個人的に行っていたこととはいえ、家畜の血統管理は先進的なものだった。 ベイクウェルのもう一つの手法が近親交配による系統繁殖の導入である。当時は一般的に家畜の近親交配は忌避されていたが、ベイクウェルは求める形質を固定するためには徹底的に近親交配を行う必要があると考えた。そこで、上述の手法で選抜した優良個体だけを繁殖に供し、近親交配を繰り返して優れた新品種を生み出していったのである。
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