レパートリー・評価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/02 05:47 UTC 版)
「カール・シューリヒト」の記事における「レパートリー・評価」の解説
シューリヒトはバッハからマーラー、ドビュッシー、ストラヴィンスキー、ディーリアスまでレパートリーが広い が、特にウィーン古典主義と後期ロマン派に傾倒しており、モーツァルトやブルックナー、ベートーヴェン、ブラームスの交響曲の演奏が知られている。また、グスタフ・マーラーへ大いなる音楽的な情熱を注いでいた。若い時代の一時期を除くとオペラの指揮はほとんどなく、リヒャルト・ワーグナーの作品にはあまり熱心ではなかった。同時代の指揮者としては例外的に歌劇場との関係も薄いが、そのことに関しては彼自身も遺憾であったと述懐している。 ザルツブルク音楽祭でのベルリン・フィルやウィーン・フィルとの積極的な共演で世界的に有名になり、ブルーノ・ワルターやヴィルヘルム・フルトヴェングラー だけでなく、クレメンス・クラウス、アルトゥーロ・トスカニーニ、オットー・クレンペラーに肩を並べると言われるようになった。 シューリヒトはかなり高齢になってから世界的名声を得た人であり、特に晩年はリウマチの悪化により、杖をつきながらかなり長い時間をかけて指揮台に登場した。しかしひとたび指揮台に上がると、年齢を全く感じさせない輝かしい生命力が、彼の指揮姿からもその音楽からも湧き出て、聴く者に(そしてオーケストラの楽員にも)大きな感銘を与えた。 シューリヒトの演奏スタイルは、基本的にテンポが非常に速く、リズムは鋭く冴えており、響きは生命力に満ち、かつ透明度の高いものであった。彼の楽譜の読みはどの指揮者よりも個性的で、ある時はザッハリヒに厳しく響かせたり、ある時はテンポを動かしながらロマンティックに歌わせるなど、決して一筋縄ではいかない意外性があったが、音楽全体は確信と明晰さにあふれていた。また、同じ曲でも決して毎回同じようには指揮せず、演奏するたびに新鮮な感動と発見を聴き手に与えた。 シューリヒトは指揮者として客観性を重視していた。シュトゥットガルトの音楽編集者ゲッツ・ティームは、彼のリズムの明快さをピエール・ブーレーズと比較している。彼のモットーは「何かを創造することは、それを使用することより優れている」。音楽学者ベルナルド・ガヴォティは、作品に忠実で、適切で、融通無碍であると評している。1955年、彼は連載「偉大な解釈者(Die großen Interpreten)」でシューリヒトを肯定的に評価した。彼は、シューヒリヒトを、聴き手の感覚のあらゆる能力に対応できる「現代の3、4人の最も偉大な指揮者」の1人に数えている。音楽学者のリヒャルト・シャールとヴィリー・タッポレットは「解釈において堅固な精神性が牽引している」のだと語っている。音楽学者のマティアス・マイヤーは、シューリヒトの解釈を「バランスがとれて完璧」と呼んだ。また、オペラ演出家のルドルフ・シュルツ=ドーンブルクはシューリヒトについて次のように述べている「このそびえ立つ小柄な男の仕事ぶりと音楽作りは、作曲家の作品に対して完全に一歩下がった芸術的な謙虚さに特徴があった」。
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