リスク中立確率と資産価格付けの基本定理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/05 15:08 UTC 版)
「無裁定価格理論」の記事における「リスク中立確率と資産価格付けの基本定理」の解説
詳細は「リスク中立確率」および「資産価格付けの基本定理」を参照 無裁定価格理論に密接に関係したファイナンスにおける価格付け理論としてリスク中立確率(英: risk-neutral probability)を用いたリスク中立価格付け(英: risk-neutral pricing)がある。 リスク中立確率とは、市場に存在するあらゆる資産価格を利子率で割り引いたものが(局所)マルチンゲールとなるような仮想上の確率を言う。リスク中立価格付けとは、何らかの方法でリスク中立確率をあらかじめ求めておいて、リスク中立確率に基いて金融資産の将来のペイオフの割引価値の期待値を取り、その期待値を現在価格と見なす方法である。リスク中立確率の定義から、リスク中立価格付けによる価格は理論的な市場での資産の現在価格と一致している。 リスク中立価格付けと無裁定価格理論は次の資産価格付けの基本定理(英: the fundamental theorem of asset pricing)により関係づけられる。金融市場の数学的定式化の違いにより定理の内容が若干異なるが、通常以下のように言及される。 資産価格付けの第1基本定理 金融市場に裁定取引が存在しない必要十分条件は少なくとも1つ以上のリスク中立確率が存在することである。 資産価格付けの第2基本定理 金融市場に裁定取引が存在しないと仮定する。この時、金融市場が完備である必要十分条件はリスク中立確率が一意に定まることである。 ここで例えば、ある資産のリスク中立価格付けによる価格(つまり現在価格)が無裁定価格理論による価格(複製ポートフォリオの現在価値)を上回っているとする。この時、その資産を1単位売り、複製ポートフォリオを組成し、残額を債券に投資すれば裁定機会が生じることになる。逆の場合も同様にして裁定機会が生じることが確認できる。裁定機会が存在するならば資産価格付けの第1基本定理よりリスク中立確率は存在しないので、リスク中立価格付けによる価格は無裁定価格理論による価格と一致している。 リスク中立確率は定義に経済学的な需給メカニズムは介在していない。よってリスク中立価格付け自体は数学的な操作に過ぎず、経済学的な価格の理論的基礎付けは自明ではない。しかし上述の通り資産価格付けの基本定理を通して裁定取引の非存在や市場の完備性と結びつくため無裁定価格理論と同値になり、経済学的な基礎付けが得られることになる。
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