モンテカルロ碁の登場前
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/16 15:13 UTC 版)
「コンピュータ囲碁」の記事における「モンテカルロ碁の登場前」の解説
評価関数が作りづらいこと チェスや将棋では、それぞれの駒の価値が異なるため、駒の交換による損得を評価することができる。また、王将・キングというターゲットがはっきりしているため、王将・キングの守りが薄いか堅いかを評価するなど比較的有効な評価関数を作ることが可能である。しかし、囲碁では、石自体に軽重がなく、置かれた場所や形により要石になったりカス石になったりする。そのため、チェスや将棋のように、有効な評価関数を作ることはできなかった。 オセロでは、隅を取ることが非常に重要である。そのため、隅を占めることを高く評価する評価関数が有効である。しかし、囲碁では、同じ盤上の地点であっても、状況によってその価値が大きく異なることが多く、ここを占めれば明らかに有利という評価が難しい。 感覚的な部分が多いこと 将棋に比べ、囲碁は最善手と次善手の差が少ない。また、理詰めで着手を導きやすい将棋と比較して、感覚的な部分が多分にあることも、コンピュータプログラム(アルゴリズム)との親和性が低い一因である。 データベースが膨大であること 将棋・チェス・オセロの定跡と囲碁の定石では、終局までの手数に占める定石・定跡の手数の割合が将棋・チェス・オセロのほうが高く、勝敗に対する影響度も定石に比べ定跡のほうが高い。そのため、データベースの充実による棋力上昇は、将棋・チェス・オセロのほうが効果的である。オセロと囲碁は、終局に向かうにつれて、着手可能点が減り、最終的には読みきり可能な点で等しい。しかし、オセロの場合は、定石が終わり終局まで読みきれる終盤に至るまでの間(中盤)が囲碁と比べ圧倒的に短い。 盤面が広いこと 将棋・チェス・オセロ・囲碁の盤面の広さは、囲碁が一番広く、しらみつぶしに着手を評価する場合も囲碁が一番困難である。 このような理由により、悲観的な見方では21世紀中に名人に勝てるコンピュータソフトは現れないだろうと言われていた。限られた範囲内の死活を問う詰碁ではしらみつぶしに着手を探ることでプロ級の評価が挙がるプログラムはあったが、実戦の死活は詰碁になっている部分から石が長く連なっている場合も多く、その先で一眼できる可能性があったり、他の生きた石と連絡が残っている場合がある。更に、仮に石が死ぬケースであってもフリカワリでそれに代わる利得がある場合などもあり、しらみつぶしに調べるには手数が膨大で不可能である。このため、あらゆる手を読まなければならない複雑な中盤になると、途端に弱くなる。特に厚みをどう評価するかは人間のプロにも非常な難題であり、これをプログラムに組み込むことはきわめて難しかった。
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