ムフダスーン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/02 03:16 UTC 版)
アブー・ヌワースは、アラブ文学(アラビア語文学)史上、「ムフダスーン」(pl. al-Muhdathûn)と呼ばれる一群の詩人の一人とみなされている。「ムフダスーン」は「新しい」や「近代的な」を意味するアラビア語の単語「ムフダス」から語形変化した言葉である。アラビア語詩の世界では8世紀はじめごろにバシャール・ブン・ブルド(フランス語版)が現れ、カスィーダ(定型長詩)に代表される古典的様式から離れ、近代的な詩を作ろうとした。バシャールの試みは当時の詩人たちの文学的流行となった。アブー・ヌワースはこうしたムフダスーンの代表格である。 ムフダスーンの登場以前、8世紀から9世紀にかけての時代、バスラとクーファでは、美しいアラビア語と優れた文芸を文献に残そうとする「文法学派」と呼ばれる知識人たちの活動があった。ムフダスーンは、彼ら文法学派の知的活動の成果を受けてアラビア語詩を再考した。バシャールは、諧謔と都会的なセンスを基調とする新しい価値観の持ち主であった:28。バシャールはイスラーム興隆よりも昔の時代の文芸に理想を見出し、彼に続いたムフダスーンはその理想をさらに推し進めて、ベドウィンの時代のカスィーダよりも単純な語彙、当該時代の雄弁家よりも自由な形式で詩作を行った:28。ベドウィン時代の主題は、「ガザル」という詩歌の新ジャンルにおいて換骨奪胎された:66-69。ガザルは、古典的なカスィーダの導入部分である「ナスィーブ」(nasîb)から発展した詩形であり、苦い恋愛を中心主題とする:66-69。 カスィーダという形式にはそれにふさわしい内容があると観念されていたが、アブー・ヌワースは諧謔の助けを借りて、そうした固定観念から逸脱した。カスィーダは普通、野営地における嘆きのモチーフから始まるものである。「カスィーダの語り手は、打ち棄てられた野営地から始まって、止め処もなく哀れがましい話を始めるものだが、俺ならその野営地に近い居酒屋はどこにあるのか訪ねるところからはじめるぜ」と書いた:67-68。
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