二つの価値を持つ作品
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/02 03:16 UTC 版)
「アブー・ヌワース」の記事における「二つの価値を持つ作品」の解説
アラビア語詩におけるアブー・ヌワースの卓越性は斬新な詩形によるものである。彼は古い時代の詩から多くを汲み取り、なおかつそれからの流れを断ち切った。バシャールに続いた「新しい時代の人々」(ムフダスーン)、特にアブー・ヌワースのような革新者が、自らのやろうとしていることに自覚的であったことは強調されねばならない:67。アブー・ヌワースは、先イスラーム時代の詩を再認識し、散文と韻文を切り分けた文法学派の研究に学んだ。その点を考慮すると、アブー・ヌワースが師匠のハラフ・アフマルに強いられたという、有名な忘却のアネクドートが、また異なった様相を持ち始める:143。 アブー・ヌワースの詩には恋愛、特に少年愛を取り扱ったもの(ムジューニーヤ mujûniyya)だけでなく、権力者を讃えたり、風刺したりするものもある。讃える詩はカスィーダ、風刺する詩はヒジャーといい、アブー・ヌワースは自分に風刺の才能があることを自覚していた。アブー・ヌワースが特に好んだテーマは、飲酒と恋愛である。ムジューニヤート(mujûniyyât)或いはハムリヤート(khamriyyât)と呼ばれる飲酒詩はバシャールが導入したムフダスーンの流れに連なるものである一方、恋愛詩は古典形式にのっとったもの(保護や禄を与える者を讃える詩)である。これはアブー・ヌワースという詩人が登場した時代を反映している。当時、文学的創作は二つの対照的な要因により決定付けられていた。一つ目は文法学者が確立した古典詩の規範的価値であり、知識人もこれにのっとって詩を鑑賞した。二つ目は詩人の地位と社会的機能である。詩人の社会的地位の確保や上昇は、詩人に禄を与える者に委ねられていた。これら二つの要因により頌詩カスィーダが芸術の規範になり、カスィーダ古典詩の語彙、形式、主題を利用して詩作せざるをえない状況になった。
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