ミャンマーの家事調停
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 04:00 UTC 版)
以下に述べるとおり、本記事の最終改訂時のミャンマーは、ある程度整備された司法制度はあるが、家事事件の特質に適合した調停手続が確立していない法域である。ミャンマーでは、そのような法域に家事調停が定着するのか、定着するとすればどのような経過を辿るのかという、壮大な社会実験が行われているといえる。 ミャンマーは、2007年にテイン・セイン政権による政治改革が始まった頃から経済成長を加速させ、2020年にCOVID-19の蔓延による世界経済の急減速に巻き込まれたものの、その後も成長の持続を期待されている。 ミャンマーは、イギリス植民地時代に近代的司法制度を整備するとともに、イギリスの判例法を成文化した「インド法典」を包括的に移植し、「ビルマ法典」と称して、広範な法分野の一般法と位置付けてきた。民事訴訟法についても事情は同じであり、ミャンマーの司法当局は、ビルマ法典第12巻所収の民事訴訟法典 The Code of Civil Procedure (CPCと略される。)を、本体はほとんど改正せず詳細な別添第1 First Schedule で補いながら、本記事の最終改訂時も用い続けている。その結果、例えば「書証は、作成者を法廷で直接尋問しなければ、証拠能力が認められない。」というような機能性に欠ける解釈が採られても長年法改正がされず、訴訟遅延をもたらしていた。ミャンマーの弁護士は、民事紛争であっても刑事訴訟を利用して解決を図ることが多かった。 ADRの整備も遅れている。CPCには、当事者が訴訟外で成立させた和解に執行力を付与する手続は置かれているが、裁判官が和解に関与する手続は置かれておらず、実務家の中には裁判官が和解に関与することは不適法と考える者もいるほどであった。仲裁法は制定されているが、利用実績は乏しい。企業間紛争については、ミャンマー商工会議所連盟が会員企業同士の紛争について調停を行っているが、家事事件を含む一般的な民事紛争の交渉を支援する機関はほとんど存在しない。 このような状況の下で、連邦最高裁判所は、2014年12月に3か年戦略計画(2015-2017年)を発表し、民事調停の研究を開始した。2016年5月に同庁長官と日本法務省の法務総合研究所所長との会談で和解・調停制度が話題に上ったことが切っ掛けとなり、それ以前からミャンマーの法整備支援に取り組んでいた国際協力機構 Japan International Cooperation Agency (JICA) が、2016年から2017年にかけて日緬両国関係者を集めた検討会を開催した。連邦最高裁判所は、2017年5月にJICAに対して民事調停制度整備に関する協力を要請し、2018年8月に確定・公表した政策文書において、JICAを協力機関とすることを公表した。連邦最高裁判所は、2019年3月から4庁で民事調停制度の試験運用を開始し、2020年3月からは更に6庁で試験運用を開始した。
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