ミネソタ冠状動脈実験
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/13 17:59 UTC 版)
「アンセル・キース」の記事における「ミネソタ冠状動脈実験」の解説
七ヶ国共同研究の結果が公表された2年後の1968年、キースはイヴァン・フランツ(Ivan Frantz)とともに大規模な無作為化比較試験を実施した。介入群では、飽和脂肪酸が豊富な食べ物をリノール酸(Linoleic Acid)が豊富な(もともと多い状態、あるいは人工的に多くした)食べ物に置き換えた。無作為化および盲検実験は1973年に終了した。これらの実験結果は、会議や談話、あるいは博士論文の一部として、より小さく抜粋した形でずっと後になってから初めて公開された。処理されていない状態の資料と分析の結果は、この研究における主任研究員であるイヴァン・フランツの邸宅で2013年に発見された。この研究では、食事における食べ物の摂取量の変化による明確な効果は示されていない。65歳以上の患者では、食事に含まれる脂肪を飽和脂肪酸に置き換えると、心血管疾患による死亡率は上昇した。2016年に発表された論文「Re-evaluation of the traditional diet-heart hypothesis: analysis of recovered data from Minnesota Coronary Experiment」(「従来の食事-心臓仮説の再評価:ミネソタ冠状動脈実験で得られた資料分析」では以下のように結論付けた。 結果 – 対照群と比較して、介入群においては血清コレステロールが有意に低下した(基準線からの平均変化 −13.8% v −1.0%; P<0.001)。カプラン・マイヤー・グラフ(Kaplan Meier Graphs)は、完全無作為化群の介入群、あるいは事前の指示を受けた下位群において、死亡率における有益性を示さなかった。共変量調整回帰理論(Covariate Adjusted Cox Regression Models)においては、血清コレステロール(Serum Cholesterol)が30mg(0.78 mmol/L)減少するごとに死亡率が22%高まった(危険要因比率1.22、95%・信頼区間1.14〜1.32; P <0.001)。冠状動脈アテローム性動脈硬化症(Coronary Atherosclerosis)、もしくは心筋梗塞(Myocardial Infarction)に対する介入群においては、有益性を示す証拠は見付からなかった。これには5つの無作為化比較試験が包括されることが体系的批評で確認された(n = 10 808)。展望研究においては、これらのコレステロール介入群は、冠状動脈性心臓病による死亡率(1.13、0.83〜1.54)、もしくはあらゆる原因での死亡率(1.07、0.90〜1.27)に対して有益性を示す証拠は見付からなかった。結論 – 無作為化比較試験で得られた証拠は、食べ物に含まれる飽和脂肪酸をリノール酸に置き換えると血清コレステロールが効率的に低下することを示しているが、これは冠状動脈性心臓病を含むあらゆる原因での死亡率の低下につながる、とする仮説を是認するわけではない。ミネソタ冠状動脈実験で得られたこれらの発見は、中途半端な宣伝が、飽和脂肪酸をリノール酸のような植物性脂肪に置き換えて食べることの恩恵を過大評価することへの役には立った、という証拠を増やした。
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