ベクター中に付加される機能の例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/03 07:15 UTC 版)
「ベクター (遺伝子工学)」の記事における「ベクター中に付加される機能の例」の解説
人工的に構築されたベクターには、予め必須コンポーネントは含まれており、一部のベクターについてはその他の追加機能が含まれている。 複製起点:宿主細胞内でのベクターの複製と維持に必要となる。 プロモーター:プロモーターは、ベクターの導入遺伝子および抗生物質耐性遺伝子などのベクター内の他の遺伝子の転写を促進するために使用される。一部のクローニングベクターは、クローニングされたインサートのプロモーターを必要としないが、クローニングされた産物を発現させるため発現ベクターにおいては必須の構成要素となる。 クローニングサイト:ライゲーションを通じて外来DNAをベクターに挿入できる、マルチクローニングサイトの領域。 遺伝的マーカー:ベクターが宿主ゲノムDNAに統合されていることを確認するための遺伝的マーカー。 抗生物質耐性:抗生物質耐性遺伝子を備えたベクターは、抗生物質を含む成長培地で培養することで、ベクターを取り込んだ細胞を選択することができる。 エピトープ:一部のベクターには、発現したタンパク質に組み込むことができる特定のエピトープの配列が含まれている場合がある。これにより、標的タンパク質を発現する細胞の抗体同定を可能にする。 レポーター遺伝子:一部のベクターには、挿入配列を含んでいるプラスミドを同定するためのレポーター遺伝子が含まれている場合がある。代表的な例は、ガラクトースを消化する酵素であるβ-ガラクトシダーゼのN末端フラグメントをコードするlacZ-αである。マルチクローニングサイトをlacZ-α内部に含むことで、ベクターへのライゲーションが成功すると遺伝子配列が破壊されβ-ガラクトシダーゼを不活性させることができる。細胞をガラクトース類似体(X-gal)を含む培地で培養することで、コロニーの色に青/白の変化がつくため、容易に挿入配列が入ったベクターのみを識別して選択することができる(ブルー・ホワイトセレクション)。すなわち、β-ガラクトシダーゼを発現している細胞(インサートは含まれない)は青いコロニーになる反面、挿入物を含む可能性があるものは白いコロニーとなる。 その他の一般的に使用されるレポーターには、 緑色蛍光タンパク質とルシフェラーゼが挙げられる。 ターゲティング配列:発現したタンパク質を、細胞内の特定の細胞小器官や細菌のペリプラズム空間などの特定の場所に誘導するように、タンパク質にターゲティング配列を付加する場合がある。 タンパク質精製タグ:一部の発現ベクターには、発現したタンパク質の精製を容易にするタンパク質またはペプチド配列が含まれている。 例としては、ポリヒスチジンタグ 、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質などが挙げられる。これらのタグのいくつかは、標的タンパク質の溶解度を高めることもできる。標的タンパク質はタンパク質タグと融合するが、タンパク質とタグの間のポリペプチドリンカー領域に配置されたプロテアーゼ切断部位により、タグを後から除去することができる。
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