ブローデル『地中海』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 00:21 UTC 版)
「アナール学派」の記事における「ブローデル『地中海』」の解説
1956年のフェーヴル死去以降にアナール派を率いたのは、フェルナン・ブローデルである。ブローデルは、第一世代のフェーヴルとブロックに続く、アナール学派第二世代と位置づけられる。 1949年に刊行されたブローデルの長大な博士論文『地中海』は、経済史や統計学、地理学の知見を取り入れながら、長期にわたる地中海世界全体の持続と変化を描き、「全体史」的総合をめざすアナール派の一つの頂点と目されるようになった。 『地中海』の第二部は「集団の運命と全体の動き(destins collectifs et mouvements d’ensemble)」と題されている。そこでブローデルが注意を集中しているのは、国家・社会から経済システムにいたる文明全体の構造の歴史である。ブローデルによれば、そうした大きな構造は、目前に起こる事件の歴史よりも遅い速度で動いている。それは数世代単位、ときには数世紀単位で動くため、同時代の人々は、ほとんど変化に気づかない。それでもやはり人々が、この緩慢な流れによって運ばれていることに変わりはない。 こうした考えはブローデルが「長期持続 longue durée/ 英:long-time cycle」と呼んできたものである。「長期持続」はこうしてアナール学派の特徴と関心を示す概念となる。 ブローデルは以後も人間を動かすシステム全体に注目する『物質文明と資本主義』など大著の刊行を続ける。『地中海』は世界的な注目を集め、ブローデル以降、アナール派の世界各国への紹介がさかんに行われるようになった。
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