フォルクスワーゲン排ガス規制検査不正問題
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「ディーゼル自動車」の記事における「フォルクスワーゲン排ガス規制検査不正問題」の解説
自動車が合理的に発生すると予想することができる条件下で、排出制御システムの効率を低下させる任意の装置を「ディフィートデバイス」と、排出ガスを著しく悪化させるエンジン制御を「ディフィートストラテジー (defeat strategy)」と呼ぶ。ディフィートデバイスはアメリカ合衆国およびEUでは違法である。 2015年9月18日、アメリカ合衆国環境保護庁 (EPA) は、フォルクスワーゲンの一部のディーゼルエンジン搭載車でこのディフィートデバイスを使った不正が行われていたことを公表した。9月20日にはこの不正を認める声明をフォルクスワーゲングループのCEOが出した。検査に掛けられていることをECUが判断し、その間は排ガス浄化装置をフル稼働して排ガス基準を達成するが、通常走行時は装置を十分に稼働させずに「完全燃焼」を優先、その結果、窒素酸化物が最大で規制値の40倍となる場合もあるとされた。浄化装置を常時フル稼働させると出力、燃費、および部品寿命の悪化があるためと推測される。同型エンジン搭載車はグループ企業のアウディも含め、アメリカ合衆国で約50万台、全世界で約1,100万台にのぼり、不正に対する課徴金、機器の改修費用、顧客への賠償、民事訴訟等による経営・販売環境の悪化が懸念されている。 なお、ディーゼル車のテスト時と実走行時の汚染物質排出量の著しい乖離について、フォルクスワーゲンの不正がEPAにより告発される以前から、ICCT (International Council on Clean Transportation) により繰り返し指摘されてきた。だが走行中の車に搭載できるポータブル測定装置の未熟さや、実走行時で完全に同一な試験条件を適用することの困難などを理由に、見過ごされてきた。 日本でもディフィートストラテジーは問題視されてきた。2011年6月、いすゞ自動車のフォワードがエンジン制御のソフトウェアによって排ガス規制を無効化している事実を東京都が発見して公表。これにより当該車種はリコールとなった。この事態を重く見た国土交通省は「オフサイクルにおける排出ガス低減対策検討会」を立ち上げ2012年3月30日に答申を受けている。この答申に基づいた施策として2013年10月1日、3.5tを超える貨物自動車にディフィートストラテジーを適用することを禁止した。ただしこの規制では乗用車は適用外であり、その事実はフォルクスワーゲンの問題が顕在化した後に報道された。乗用車が適用外となっている理由を国土交通省は「乗用車で不正が行われるとは想定していなかった」ためと説明している。
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