ヒートエクスチェンジャー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/12 03:49 UTC 版)
「カーヒーター」の記事における「ヒートエクスチェンジャー」の解説
空冷エンジンは冷却水を持たない構造上、ヒーターコアを使用することが出来ない。そのため、エンジンの回転中非常に高温となるエキゾーストマニホールドの周囲をシュラウドで囲んだ上で、その内部に外気を通して加熱し、室内に温風を導入するヒートエクスチェンジャーと呼ばれるシステムが用いられた。温度制御は加熱された温風と加熱されていない外気を混合することで行われたが、設計によっては排気系統にリークが発生した際に最悪の場合室内に排気ガスの致死的な充満が発生する、安全上の問題を引き起こす可能性があった。また、キャブレターやインテークマニホールドの接合部の状態によっては室内にガソリン臭が立ち籠める場合もあり、温水式ヒーターと比べて快適性にやや難があった。 こうしたヒートエクスチェンジャーによるカーヒーターはフォルクスワーゲン・タイプ1やポルシェ・911で広く採用された。ヒーターコアを用いた温水式カーヒーターと比較しても、ヒートエクスチェンジャー構造の排気管に交換するだけで暖房機能が取り付けられるためにコストも安く、日本車では戦後の国民車として活躍したスバル・360がこの形式を採用、当時は最高級車のクラウン・デラックスにしか装備されなかったカーヒーターが日本の大衆車にも広く採用された。 しかし、極端な寒冷地に置いては空冷エンジンではオーバークールを引き起こしやすく、結果としてカーヒーターが殆ど利かなくなる欠点もあった。そのため、タトラなどの空冷エンジン車製造メーカーではこうした形式のヒーターを採用せず、後述の燃焼式ヒーターを空冷エンジン車の主要なカーヒーターとして採用し続けた。ポルシェ911もメインヒーターはヒートエクスチェンジャーとしながらも、補助ヒーターとして燃焼式ヒーターも装備していた。 派生的用途としては、1970年代にマツダのロータリーエンジンがマスキー法を突破するために採用した二次空気導入装置の一種であるサーマルリアクターに、このヒートエクスチェンジャーが採用されたことが知られている。サーマルリアクターによって燃費が悪化した排ガス対策車両の燃費改善のために、排気管の中途にエアポンプからの送風を予熱するためのヒートエクスチェンジャーを装着し、1975年型エンジンでは1973年比40%の燃費改善を達成した。この開発作業はフェニックス計画と名付けられた。ただし、マツダのヒートエクスチェンジャー機構の着想元は、空冷ポルシェのカーヒーターではなく、技術者の自宅に取り付けてあった瞬間湯沸器の内部機構である。
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