ヒスイ海岸の成り立ち
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/17 08:49 UTC 版)
「ヒスイ海岸 (糸魚川市)」の記事における「ヒスイ海岸の成り立ち」の解説
糸魚川市の海岸は、砂浜ではなく砂利や小石で形成されていることが大きな特徴である。糸魚川市の海岸で見られる石の種類は日本一といわれ、同市は「(自称)日本一の石ころタウン」と名乗っている。その多くの石が見られる理由として「フォッサマグナ」と「糸魚川静岡構造線」が挙げられる。 糸魚川静岡構造線は日本列島を東西に分ける断層であると同時に、フォッサマグナ西側の境界断層でもある。糸魚川静岡構造線より西にある山々には約1億年から5億年前(中・古生界)に生成された岩石があり、東にある山々には約2000万年前(新生界)よりも新しい時代に生成された岩石が存在している。東西の山々からさまざまな時代の岩石が、姫川や青海川などの流れによって日本海まで運ばれ、波に乗って海岸に漂着する。海岸で見つかる多くの石は、東西の山々から長い時間をかけて川の流れを下り、海に出て波にもまれていたため、角が摩耗して手ごろな大きさになっている。 種類としては、火成岩(安山岩、流紋岩、ひん岩など)、変成岩(結晶片岩、ネフライト、蛇紋岩など)、堆積岩(砂岩、泥岩、石灰岩など)などで、ときにはルビーやサファイアが見つかることもある。岩石の時代的には古生代から新生代に至るもので、化石が含まれている岩石も時折見受けられる。 海岸で見つかる石の中に、ヒスイの原石が存在する。ヒスイは変成岩の仲間で、約5億年前に生成されたと推定されている。日本国内でヒスイを産する場所は、2018年(平成30年)の時点で糸魚川市を含めて12の地点、世界的には日本を含めてミャンマー、ロシア、カザフスタンなどの12の国のみである。 日本の海岸でヒスイの原石が見つかるのは、糸魚川市大和川地区の海岸から富山県下新川郡朝日町の宮崎・境海岸に続くごく限られた一帯のみで、世界的に見ても珍しいものとされる。ヒスイの出所については、既に述べたとおり山から姫川や青海川などの流れによって海まで運ばれてきたという説の他に、フォッサマグナでのヒスイを含んだ蛇紋岩層が糸魚川市から富山県朝日町にかけての海底にも分布していて、波の撹拌作用によってヒスイが海岸に打ち上げられるという説が存在する。ただし、後者の説については海底の地質や地層までが明らかになっていないため決め手を欠く。 昭和の終わり頃までは、糸魚川市の海岸でヒスイを見つけるのはそれほど困難ではなかった。当時は質の良い物のみを拾い、残りのヒスイは海に戻していたほどであった。 河川の上流から流れ下ってくるヒスイは川に設置されたたくさんの砂防堰堤に遮られて海岸に到達しにくくなった上に、海岸に置かれた無数のテトラポッドがヒスイ探しの障害となっている。このように条件の悪くなった現在でも、海岸で1日かけて探せば数個のヒスイを拾うことができる。
※この「ヒスイ海岸の成り立ち」の解説は、「ヒスイ海岸 (糸魚川市)」の解説の一部です。
「ヒスイ海岸の成り立ち」を含む「ヒスイ海岸 (糸魚川市)」の記事については、「ヒスイ海岸 (糸魚川市)」の概要を参照ください。
- ヒスイ海岸の成り立ちのページへのリンク