海底の地質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/25 22:24 UTC 版)
海底と大陸の基盤岩は、異なる岩石で構成されている。海底の基盤は比重の大きな玄武岩で出来ているのに対して、大陸の基盤は比重の軽い花崗岩が主体となっている。プレートテクトニクスによれば、海洋底を形成する岩盤(海洋プレートの上部)は中央海嶺で造られる。ここは地下深部からマントル物質が上昇して来る場所である。海嶺の地下にはマントル成分の一部が融解したマグマ溜まりがあり、マグマが順次冷却固化して玄武岩の岩盤が形成される。海洋プレートはその後海嶺から遠ざかるように動き、別の海洋プレートか大陸プレートに衝突して地殻の下に沈みこんでゆく。海嶺から他のプレートに衝突するまでの間は深い平坦な海底(深度3000-6000m)となっており、海洋底面積の大部分を占める。他のプレートと衝突して沈み込んでいる部分は、海溝やトラフと呼ばれる溝状の深い部分である。海洋底はプレート境界で地球内部に沈み込んでゆくため、その寿命は最も古いものでも2億年程度である。 海洋底はほとんど平坦であり陸から遠いため、陸を起源とする砂礫などは堆積しない。代わりに海洋に広く生息する珪藻・放散虫の死骸を含むチャートなどの岩石や、海水から化学的に析出するマンガン団塊などがゆっくり堆積してゆく。南太平洋には玄武岩質の火山島が点在しており、その周囲にはサンゴ礁が広がっている。火山島は噴火が終わると段々低くなって海に沈んでゆくが、サンゴ礁がある場合は島が沈む速度よりもサンゴの成長速度のほうが速いため、石灰岩の島が出来る。 プレートを形成している海底岩盤は海溝で地下へ沈みこんでゆくが、岩盤の上に載ったこれらチャートや海底火山や石灰岩などの岩石類はプレート衝突の際に相手のプレートに乗り上げてしまうことがある。地下深く沈み込んだプレートの上側は、右図のように火山活動が活発な場所である。地下に沈んだ海洋プレートから搾り出された水が周囲のマントルを部分溶解して花崗岩質マグマを作り、大陸の基盤が形成されている場所である(すなわち大陸を構成する花崗岩は海洋プレートの沈み込みによって作られる)。地下に沈むプレートから離れて相手側のプレートに乗り上げた火山島やサンゴ礁は、その後の火山活動によって陸地に取り込まれてしまうが、これを「付加体」と呼んでいる。海洋起源の石灰岩の大きな山があったり、三葉虫やアンモナイトなどの海生生物の化石が地上で採取できたりするのは、そこが「付加体」だからである。大陸地殻は海洋地殻よりも軽いため、一旦形成された大陸は(侵食を受けながらも)地表に残り続ける。
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