ハザール人とユダヤ人をむすびつける理論の現状
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 15:57 UTC 版)
「ハザール」の記事における「ハザール人とユダヤ人をむすびつける理論の現状」の解説
アラブ世界では、反シオニズム主義者、反ユダヤ主義者たちの間におけるこの理論への支持は高い。 こうした賛同者たちの議論では、もしアシュケナジーたちがかつてのハザール人であってセム系の起源を持たないのであれば、イスラエルへの歴史的権利もなく、神による、聖書やクルアーンに見える、イスラエル人へのカナンの地の約束の主体でもなく、それゆえ、宗教的シオニストとキリスト教シオニストの双方の理論的基盤が葬りさられるという。 1970年代と80年代には、ハザール人理論はロシアの排外的反ユダヤ主義者たちにまで広がり、とくに歴史家レフ・グミリョフは「ユダヤ系ハザール人」を、7世紀以来、ロシアの発展を繰り返し妨害してきたものとして描き出している。 バーナード・ルイスは1999年につぎのように述べた。 この理論…はいかなる証拠からも支持されていない。専門分野において、すべてのまじめな学者たちから放棄されて久しい。それは、ハザール人理論が、ときおり、政治的な論争において用いられるアラブ諸国においても同じである。 イスラエルの歴史家シュロモー・ザンドは、アシュケナジー・ユダヤ人たちのハザール人祖先という主題を、その論争的な書物、『The Invention of the Jewish People』(2008年刊、邦題:『ユダヤ人の起源 歴史はどのように創作されたのか』)において扱った。 ザンドが主張するところでは、イスラエルの歴史家たちは、ハザール人を祖先とするテーゼを傍流に追いやり、1951年から現在まで無視し続け、ヘブライ語でのハザール人についての一冊の歴史書も刊行されていないという 。 歴史家たちからは、ザンドの調査の質に対する批判が行われている。 サイモン・シャーマ(英語版)は、ザンドの著書への批評で、つぎのように書いている。 アシュケナジーのユダヤ人の全体が、必ずハザール人の子孫に違いないと主張するのは、ちょうどまさに、中断のない系譜を無批判に主張することであり、ザンドは、ユダヤ人の歴史のより広い文脈にこのんで逆らおうとしている。 アニタ・シャピラ(英語版)は「ザンドはほとんど異端的で、議論を呼ぶような翻訳にかれの議論の基礎をおいており、さらには、重要な学者たちの信頼性を、彼らの結論を何ら証拠もなく否定することで、損なおうと試みている」と書いた。
※この「ハザール人とユダヤ人をむすびつける理論の現状」の解説は、「ハザール」の解説の一部です。
「ハザール人とユダヤ人をむすびつける理論の現状」を含む「ハザール」の記事については、「ハザール」の概要を参照ください。
- ハザール人とユダヤ人をむすびつける理論の現状のページへのリンク