ティベリア式発音の研究資料
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「ヘブライ語のティベリア式発音」の記事における「ティベリア式発音の研究資料」の解説
現在ヘブライ語の文法書で説明されている発音方式は、ティベリア式の発音体系ではなく、中世フランスのラビで、聖書注解者のダヴィド・キムヒが著した文法書に記されている体系に基づいている。キムヒの体系ではティベリア式の母音記号が「短母音」と「長母音」に分類され、それぞれの母音記号には、セファルディムの発音方式に基づいた音価が定められている(母音記号「カマツ」(אָ) には2種類の音価、/a/, /o/ がある点や、シュワー (אְ) の発音は /ɛ̆/) とされている)。 そのため、ティベリア式発音の本来の音韻体系を知るには、様々な文献を収集、検討することが必要である。以下はその参考資料である。 アレッポ写本などの旧約聖書の初期の古写本には、古い発音体系を示す記号が記入されており、当時どのように聖書ヘブライ語が発音されていたかを知る直接の証拠となっている。 10世紀のヘブライ語学者アーロン・ベン・モシェ・ベン・アシェルの文法書『声の書』(Sefer haQoloth)や、『読者への指南』(Horayath haQoré)などの10世紀から11世紀頃に著されたヘブライ語文法書。また、アブラハム・イブン・エズラやイェフーダー・ベン=ダーウィード・ハイユージュなどの中世のセファルディムの文法学者による著作にある発音についての明確な説明の記述。イブン・エズラやイェフーダー・ベン=ダーウィード・ハイユージュの著作からは、すでにティベリア式発音がその地域の発音方式に影響されている証拠が見られる。 ティベリア式と同時代の他の発音方式、エレツ・イスラエル(イスラエルの地)式や、バビロニア式。当時、パレスチナ、ティベリア、バビロニアのユダヤ人社会では、それぞれの地域の方言を基にした発音方式を発達させていた。「エレツ・イスラエル式」、「バビロニア式」で使用された母音記号は今日では使用されていない。ティベリア式の母音記号「ニクダー」は主にヘブライ文字の「下」に表記されるが、他の2つの方式の母音記号は、ヘブライ文字の「上」に表記されているのが特徴である。 カライ派の人々によってアラビア文字で記された旧約聖書の写本。これらの写本では、母音の表示にティベリア式の母音記号が用いられている。母音の長短の区別を表すため、アラビア文字で長母音を表す子音文字(準母音)やスクーンが記されており、ティベリア式発音の母音の長短の区別や音節構造を知ることができる。 口承によるヘブライ語の様々な発音方式の中でも特にイエメンのユダヤ人のヘブライ語の発音や、カライ派の発音方式。これら2つの発音方式は、ティベリア式発音と同じような古い発音の特徴をよく保持している。
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